「田舎弁当」って何? “関東一小さな村”になぜ店を構えたのか
それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
「丹波山村(たばやまむら)」という村がどこにあるか、皆さんご存知でしょうか? 青梅街道を西へ行き、青梅、奥多摩、小河内ダムを越えて山梨県に入ると、人口わずか540人ほどの関東一小さな村が見えて来ます。かつては武田信玄の金山の郷で栄え、甲州裏街道の宿場「丹波宿」として賑わっていました。 そんな丹波山村に「再び“あかり”を灯したい」と、2021年7月15日、地元の食材を使った「田舎弁当」が人気の、憩いの場がオープンしました。 お店の名前は「灯里(あかり)」。明るい笑顔でお客さんを出迎えてくれるのは、西山寿恵さん・38歳です。
西山さんは埼玉県川口市の出身で、小学生からガールスカウトに入り、中学・高校ではバレーボールの選手に。大学では英語を学び、建設会社に就職し、その後、銀座の百貨店に転職。25歳までガールスカウトをしていたので、活動的で責任感の強い女性です。 趣味は登山。ある日、北アルプスの燕岳(つばくろだけ)の山小屋で、スタッフを募集していることを知ります。募集要項は「明るくて元気な方、集団行動ができる方、体力のある方」。 「これって私のことだ! 好きな山で働きたい」と、6年勤めた百貨店を辞めて、標高2712mの尾根にある「燕山荘」で働き始めます。
「両親は驚いていましたが、言ったら聞かない性格なので諦めていましたね。山小屋では、食事の支度や布団干し、トイレ掃除、接客など忙しく働きましたが、雄大な北アルプスでの生活は楽しいことが多かったです」 そんな西山さんに再び転機が訪れたのは、36歳のころ。丹波山村が、村民や来村者のための交流施設をつくるにあたり、調理経験があって接客もできるスタッフを募集していることを知ります。 自分の経験が、この村のために活かせるのではないかと、「地域おこし協力隊」に応募。その後、採用が決まって西山さんが丹波山村にやって来たのは、2021年4月1日のことでした。