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元金融マンの退屈な老後を変えた意外なモノは 小津安二郎の映画「東京物語」を見て考える嫁と舅の距離

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 嫁と姑(しゅうとめ)を描いた映画は数あれど、嫁と舅(しゅうと)の物語は少ない印象があります。嫁と姑というと、なぜかステレオタイプに、ついギスギスした関係を連想してしまいますが、嫁と舅ならどうでしょう? 第二の人生をいきいき過ごすため、今回は小津安二郎の名作「東京物語」を教科書に、人材コンサルタントの田中和彦さんと「嫁と舅の距離」について考えてみましょう。 【動画】「東京物語 ニューデジタルリマスター」予告編                   ◇  「東京物語」(1953年/小津安二郎監督)は、世界的にも非常に高く評価されている日本映画の古典的名作です。  ことさら劇的な出来事が描かれているわけではありませんが、そのことがかえって時間や国を超えて、普遍的な人間の営みを冷徹に描いていると言われています。  難解な部分はなく、極めてシンプルなストーリーです。

 広島の尾道に住む老夫婦が、東京で暮らす子供たちを訪ねるのですが、訪問先の長男も、長女も、それぞれの生活で精いっぱい。二人はあまりかまってもらえません。唯一、戦死した次男の嫁だけが仕事を休み、東京の名所に案内するなど、義父母に対して優しい心遣いを示すのです。そして、満足して尾道に帰りついた老夫婦なのですが……。  おっと、その後の展開は、ぜひあなた自身の目で確認してください。  次男の嫁を演じたのは、原節子さん。その舅(しゅうと)役を演じたのが、笠智衆さんです。ラスト近くの2人のやり取りには、何度見ても涙を誘われます。嫁と舅が心を通わせる、名シーンと言ってもいいでしょう。  古今東西、嫁と姑(しゅうとめ)についての物語は、その関係性の良しあしはともかく、数多く語られています。でも、嫁と舅との話は意外に少ないのではないでしょうか。  私は、あるモノを通じてお互いの距離を縮めた嫁と舅を身近に知っています。  「お義父さん、ポケモンGOを一緒にやりませんか?」。Sさん(71)は、長男の妻であるMさん(47)から、そう声を掛けられました。それは3年前の年末。千葉に住む長男一家が、正月を迎えるために横浜のSさん宅を訪ねた時のことです。  そのゲームの名は聞いたことがあったものの、具体的な中身についてSさんは全く知りませんでした。唐突な誘いに、やるとも、やらないとも、答えることができなかったそうです。でも「ちょっとスマホ貸して」と、促されるままにMさんに手渡すと、ゲームをインストールされてしまいました。  やり方の手ほどきもないまま「じゃあ、そこの公園に行きましょうか」と、早速連れ出されました。Mさんに引っ張られるようにしてSさんは、スマホ片手にゲームの世界へと、一歩足を踏み入れました。  最初は「一体、オレは何をやっているんだろう」と、まるで人ごとのようにあきれていたそうです。でも、Sさんがゲームにはまるのに時間はかかりませんでした。  朝起きると、モンスターがいそうな場所へと、散歩したくてたまらなくなるのです。「ちょっと行ってくるわ」と、朝食の支度をする妻に声を掛け、そそくさと出かけては、お目当てのモンスターを一つ、二つと捕獲していきます。気付いたら、1日に15キロも歩いていたこともあったそうです。  「今日はレベル25を超えたよ!」「明日のイベントデイ、どうする?」「ボスポケモン、ゲット!」などなど、MさんとのLINEのやり取りもいつになく頻繁に。嫁と舅の競争は、エスカレートしていきました。  ゲームを始めて1年半、Sさんは自分の体調が以前よりもはるかによくなっていることに気付きます。体重は10キロ以上減量。過去の健康診断で、異常値と指摘されてきた項目も、いつの間にか正常値の範囲内に収まっているではありませんか。掛かりつけの病院の看護師さんも「おめでとうございます! メタボ解消ですね」と喜んでくれたそうなのですが、さすがにその理由は話せなかったのだそうです。  元金融マンだったSさんは、現役を引退してからとくに運動もせず、時間を持て余すようになり、体重は増える一方でした。そのことを気にかけていたSさんの妻が、Mさんに愚痴をこぼしたのが、全ての始まりでした。  後でその裏話を聞かされ「そうか、まんまと嫁の策にはまったわけか!」と苦笑するSさん。健康体になった今、妻と嫁には感謝の言葉しかありません。  さて、2人の得点獲得競争は、今も続いているそうです。どっちが勝っているかって? それは言わぬが花でしょう。ゲームが取り持つ嫁と舅のほほ笑ましい関係。これも現代ならではのエピソードなのかもしれませんね。                   ◇ 田中 和彦(たなか・かずひこ) 人材コンサルタント/プロデューサー/(株)プラネットファイブ代表取締役 1958年、大分県生まれ。一橋大社会学部卒業後、リクルートに入社。「週刊ビーイング」「就職ジャーナル」など4情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社ギャガで映画プロデューサー、キネマ旬報社・代表取締役を経て、現職。キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『「定年サバイバル時代」の働き方ルール』(朝日新聞出版社)、『50歳から男振りを上げる人』、『42歳からのルール』(明日香出版社)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。

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