英下院、安楽死法案を「賛成多数」で可決 審理は年明け続行へ
英議会下院で29日、終末期患者の「安楽死」を認める法案の第1回採決が行われ、賛成多数で可決された。年明け以降、再度下院や上院で審理が続くため、最終的に法律として成立するかは予断を許さない状況だ。 法案を提出したのは、与党・労働党のキム・レッドビーター下院議員。英メディアによると、対象者はイングランドまたはウェールズに居住し、余命6カ月未満の18歳以上の患者という。 あくまで「本人の意思」が条件で、医師や裁判官の同意も必要となる。命を絶つ方法は、医師が薬物を用意し、患者自身がそれを摂取する手順が想定されている。 英国では2015年にも同様の法案が審議されたが、反対多数で否決された。だが近年は国民感情の変化も指摘されている。調査会社ユーガブの最新世論調査では、安楽死の合法化支持が73%に上り、不支持の13%を大きく上回った。 賛成派は、「苦痛の中で死を待つより、患者は『より良い死』を選ぶ権利を持つべきだ」と主張している。一方で反対派は、安楽死が合法化された場合、介護者に負担をかけたくないとの思いから「自分は死んだ方がいい」と圧力を感じてしまう患者が増えると懸念している。 欧州では、既にオランダやベルギーで医師の薬物投与などによる安楽死が合法化されている。キリスト教徒の中で特に自殺をタブー視するカトリック信者が多いスペインでも、21年に合法となった。 一方、英国や日本では自殺ほう助罪や嘱託殺人罪などに問われる可能性があり、刑事罰の対象となる。【ロンドン篠田航一】