手軽に「ググる」はもうできなくなる?…米司法省がグーグルに「Chrome売却」を要求した本当の理由
11月20日、アメリカの司法省は、グーグルの検索サービスの独占を解消するためとして、インターネット閲覧ソフト(ブラウザ)「Chrome(クローム)」事業の売却を含む是正案を裁判所に提出した。立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は「アメリカには、公正な自由競争に対する信念が強く根付いており、資本の独占に対して厳しく臨んできた歴史がある。今回の訴訟により、グーグルは戦略の転換を迫られている」という――。 【写真】「グーグル敵視」の姿勢をとってきた大物政治家は、この人… ■グーグルが「分割」されるかもしれない 11月、巨大テック企業の一角、グーグルが分割されるかもしれないというニュースが世界中に流れた。アメリカ司法省が、グーグルに対して、インターネットブラウザ「Chrome」事業の売却などを要求しているという。 Webトラフィック解析を行うサイト「StatCounter(スタットカウンター)」によると、Chromeは世界のブラウザ市場の約3分の2を占めている。日本でも、日頃からChromeをメインに使っているというユーザーは少なくないだろう。その事業が売却されるかもしれないというのだ。アメリカで一体何が起こっているのか。 問題となっているのは、「反トラスト法」違反である。反トラスト法とは日本でいう独占禁止法にあたる。グーグルは検索広告市場を独占しているとして訴えられており、今回の「Chrome売却」の話も、4年以上にわたる裁判の流れのなかで出てきたものだ。 そもそもの発端は2020年10月、アメリカ司法省が、反トラスト法違反を理由にグーグルを提訴したことに始まる。これに複数の州も追加参加し、最終的に原告はアメリカ司法省に加え、51の州および地域に拡大した。以来、ワシントンD.C.地区連邦地方裁判所で、証拠集めと審理が進められてきたが、2024年8月には反トラスト法違反との判決が下った。つまり、グーグルの敗訴である。 この判決を受けて、2024年11月、アメリカ司法省は、グーグルに対する具体的な是正案を裁判所に提出した。それが今回のニュースである。Chromeの売却という話題が大きな注目を集めているが、アメリカ司法省が要求する是正措置は多岐にわたっている。概要は下記の通りだ。 ■米司法省が要求する「8つのポイント」 ---------- 【原告による最終的な判決提案の概要】 1.Chromeブラウザの売却 (目的) ・グーグルが検索市場での支配力を維持するためにChromeを利用しているため、その売却によって競争を促進。 (具体的措置) ・グーグルはChromeを第三者に売却する義務を負う。 ・売却後、グーグルは5年間ブラウザ市場に再参入することを禁止される。 2.Androidに関する規制 (選択肢1)Androidの分割 ・グーグルがAndroidを使用して検索市場の競争を妨害する行為を防止。 ・Androidを完全に分離・売却する。 (選択肢2)行動上の是正措置 ・グーグルがAndroidを利用して自社の検索エンジンを優遇する行為を制限。 ・プラットフォーム上での公平性を確保するための監視と規制の導入。 3.デフォルト検索エンジン契約の禁止 ・グーグルが他社デバイスやブラウザで検索エンジンをデフォルトに設定するために金銭的価値を提供する契約を禁止。 (例)Appleとの契約やSamsungデバイスでのプリインストール契約の終了 4.データ共有と透明性の向上 (データの提供) ・グーグルが収集した検索データや広告データをライバル企業に共有。 ・共有は無償で、プライバシーを保護したうえで行われる。 (広告データの透明性) ・広告主に対し、検索広告のパフォーマンスやコストに関する詳細情報を提供。 ・広告データをライバルプラットフォームで利用可能にする仕組みを導入。 ----------