日本ボクシング史に残る凄いカード…“超ビッグネーム”ロマチェンコに挑む中谷正義…“世紀の番狂わせ”は起きるのか
中谷がロマチェンコの対戦相手に指名されたのには理由がある。 中谷は興国高、近大でのアマ経験を経て井岡ジム・プロから2011年6月にプロデビューすると、わずか7戦で東洋太平洋ライト級王座を獲得、11度防衛し、2019年7月にテオフィモ・ロペス(23、米)とのIBF世界ライト級王座挑戦者決定戦に挑んだが、好勝負を演じながらも判定負けした。このロペスが、昨年10月にロマチェンコを判定で破った現在の4団体統一王者である。 「負けたら引退」と考えていた中谷は、一度、引退を決意したが、その後、再起を決めて帝拳に移籍した。移籍初戦が昨年12月に米国ラスベガスで行われたフェリックス・ベルデホ(28、プエルトリコ)とのWBOインターコンチネンタルライト級王座決定戦。2度のダウンを奪われ敗戦濃厚だったが、エキサイティングな逆転TKO勝利をおさめ、全米での評価が急上昇していた。 ロマチェンコの復帰戦の相手としては申し分のない実績を作ったのである。そして帝拳プロモーションの交渉力。奇跡とも言えるマッチメイクが実現したのだ。 「2月くらいに(本田明彦会長から)決まるかもという話をもらったときは、こういう試合を望んでいたが、まさかこんな早くに実現してもらえるとは?という驚きがあった。非常にありがたくうれしかった。でも、相手が世界的に有名なロマチェンコだということを特別意識しているわけではない。いつも通り。世界チャンピオンじゃないですからね。でも、勝てば、実質、世界挑戦が決まる。しっかりと勝って世界戦につながる試合にしたい」 ロマチェンコに名前負けしていない。 元々、村田のような海外ボクサー大好きのオタクではなく、ロマチェンコの試合もすべてチェックしていたわけではないので、過大評価することがないのだ。 それどころか「試合が決まってから映像を見ました。穴が少ないですね。いい選手。今までより僕の中で評価は上がりました」とまで言うのである。 勝利のイメージも固まっている。 「ロマにとってライト級はベストな階級じゃない。そこのアドバンテージは大きいものだと思っている。その差が勝敗に関係してくるのかなと」 本来、ロマチェンコのベスト階級はひとつ下のスーパーフェザー級とも語られており、実際、ライト級の4団体を統一した後には、スーパーフェザー級に下がるという話も出ていた。 身長も170センチしかない。一方の中谷は182センチと長身だ。 この日の公式会見の最後に行われたフェイスオフでは、中谷が半分分ほど高く、思わずロマチェンコが中谷の両肩に手をやり「腰の位置下げて」とばかりに目線を下げることを願いしたほど。 中谷は、その体格差を生かしたいという。 「こう攻めたいなというイメージは作れた。自分は、この階級の中では長身。その体を生かした戦い方をしたい。ロマはサイドの動きと、中に入っての回転の強さが驚異的。なるべくそこでは戦わない。ただ遠くで戦おうとすればするほど相手にとっては中に入りやすくなる。ときには自分からプレスをかける必要がある。ロングで戦いながら強打を狙う」 ロマチェンコは、卓越した技術と高速回転が武器。ライト級に上げてからは、一発で決めるというより、打たれて、打たれて、相手が根負けするパターンが少なくない。根性なら中谷は負けない。 「逃げずに立ち向かうだけ。逃げると、そこから向こうはチャンスをみいだす。迎え撃つくらいの気持ちで戦う」