働く女性の痒いところに手が届く? 「カセット服」が昨年比120%の伸長 スーツやセットアップの進化版として需要増
■スーツ購入時の約7割がパンツを選ぶ「機能性の面で需要に対応していく」
近年の女性の仕事服トレンドにおいて、特筆すべきは「パンツの需要が増えていること」。ビジネス・リクルートともに、パンツの需要が高まり、同社でもスーツ購入時の約7割がパンツを選ぶ傾向になっているという。「動きやすさや防寒対策に加え、テーパード、ワイド、ストレートなどデザインのバリエーションがスカートより多いことも人気の理由にあげられます」。 スカートはパンツと比べて“動きにくさ”が伴う。「スカートの場合、基本的には膝まで隠れる丈でご提案となりますので、実現できるデザインの幅も狭まってしまいます。だからこそ『パンツのほうがラク』というのが世の働く女性の本音になってきている。いかに、この需要に対応していくか。仕事服を作り続けてきた当社だからこそ、機能性の面でできることがあると考えています」。 使う素材はストレッチ素材で、自宅で洗えること。シワにならないなどの機能は標準装備として考える。加えて、裏地の有無で季節感の調整ができるよう開発段階から対応しているという。 事務服や制服を廃止する企業が増え、女性の仕事着の自由度が増したからこそ、“おしゃれ”と“機能性”の両立は今後も尽きないテーマとなるだろう。 “コスパ”と“タイパ”を叶え、その日の予定や気分に合わせて自由な着回しを楽しめるカセット服。高井さんは、「パフォーマンスが高いだけに、引き続き、需要は高まっていくのではないか」と予想する。 同じ素材で上下を揃えるセットアップスタイルは、19世紀のイギリスのスーツスタイルにルーツをもつといわれている。その後、カジュアルファッションやストリートファッションにも取り入れられ、定番の人気アイテムとなっているが、スーツ同様、トップスとボトムスの2点のみが基本。それに加え、ブラウス、ジレ、ワンピースなど、アイテムが豊富に揃うカセット服はまさにスーツやセットアップの進化版。女性が活躍できる場の広がりとともに、働く女性のクローゼットの中身も進化を遂げていくのかもしれない。 取材・文/河上いつ子