【コラム】第9回「ハミルトンから戦士の顔が消えた?」|F1解説者ムッシュ柴田のピットイン
7度の王者ハミルトン、今季は追う立場になり状況が大きく変化
車体規約がガラリと変わった今季、タイトル争いはレッドブルとフェラーリによる一騎討ちの様相を見せています。フェラーリは第3戦オーストラリアGPで勝利したのを最後に直近6レース全敗とかなり苦しい展開ですが、このままレッドブルが独走することはないでしょう。 一方で絶対王者として君臨してきたメルセデスは今年ここまで、優勝争いに一度も絡めずにいます。それでも3位表彰台に5回上がっていますから、「王者転落」と言うほどではない。とはいえここまでの9戦で0勝。勢力図が去年から大きく変わったことは確かです。
そんな状況は、前人未到となる8回目のタイトル獲得を狙っていたルイス・ハミルトンにとっては、さぞ無念の展開のはずです。 ところがパドックとか会見の様子を見る限り、むしろリラックスしている感じなのが、僕にはかなりの違和感でした。 6月18日より配信されている『Saturday F1 LAB -Off the Cockpit- #7』アゼルバイジャン編でも少し触れましたが、あの週末はあまりにひどい縦揺れによる激痛で、レース直後ハミルトンはコクピットからしばらく出られないほどでいた。 ところが直後の囲み取材では、「あんなにひどいクルマは乗ったことがない」というコメントとは裏腹に、表情自体は終始笑顔でした。
そして翌週のカナダGPの会見では、「モントリオール市内のレトロゲームショップで、子供時代に熱中したセナのゲーム(アイルトン・セナ スーパーモナコGP II/1992年発売)を見つけて毎晩楽しんでいる」と語り、自身のインスタグラムにその様子を上げてます。これがまた、実に穏やかな表情のハミルトンなんですね。 5月のスペインGP辺りまでは、レース戦略で自分が相応の扱いを受けてないと、昇格していきなり速さを見せるチームメイトのジョージ・ラッセルを意識した文句が無線で何度も流れました。 しかし今では(少なくとも我々の聴ける範囲では)非難や愚痴めいた無線はすっかり影を潜めています。フリー走行でも率先して自分のマシンに実験的なセッティングを試させたりと、まるで人が変わったようです。 もちろんハミルトンにしてみれば、マシン戦闘力を少しでも上げて2強に追いつきたいと必死なのでしょう。しかしそこには同時に、自分が今季のタイトルを獲得できる可能性はもはや限りなく少ない、と冷静に捉えているもう一人のハミルトンもいるような気がします。
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