F1ドライバーを”ゾーンに入れる”、点滅するライトを使った新しいトレーニング
F1ドライバーたちは、走行に挑む前に様々なウォーミングアップを行なっている。最近流行なのは、点滅するライトを使って、”脳”をウォーミングアップする方法だ。 【ギャラリー】ホンダF1全マシン(1964~2021)ー『夢』と『挑戦』が詰まった50台ー 最高速度300km/hを誇るF1。それをドライブする前に、F1ドライバーたちは思い思いの方法でウォーミングアップする。 ガレージの裏でサッカーボールを蹴り、心拍数を上げるドライバーもいる。例えばピエール・ガスリー(アルファタウリ)は、グリッド横でトレーナーが落とすボールをキャッチし、反射神経をウォーミングアップする。 最近流行しているのは、控え室で行なうフラッシュライトを使ったウォーミングアップだ。昨年のチャンピオンに輝いたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)もこれを用い、走る前に脳を活性化している。 これはブレイズポッドと呼ばれるモノで、何もF1でのみ使われているモノではない。サッカーやNFL、テニス、MotoGP、NBAなどでも活用されている。 これを使ったウォーミングアップは単純だ。机の上に置かれたライトを、点滅した時にできるだけ早く押すだけ。これにより、反射神経を高めることができるのだ。その上、身体にも刺激を与えることができるという。 ブレイズポッドのプロフェッショナル開発責任者であるサイモン・ヤコブスは、motorsport.comに次のように語る。 「ドライバーたちは、これによって本当に活性化するんだ」 「基本的には、神経系を目覚めさせるために、心を活性化するチャレンジを使っている。そして活力をみなぎらせ、身体を動かせるように準備するんだ」 「それから予選であろうと決勝レースであろうと、マシンに乗り込んだその瞬間に彼らの準備が整う。走る準備ができているんだ。そして彼らは、あらゆる種類の刺激に対して、迅速に反応できるようになっている」 点滅するライトを消すだけ……傍目には遊んでいるように見えるかもしれない。しかしその背後には、重要な要素が存在する。ブレイズポットはアプリなどと連動するようになっていて、データとして確認することができるのだ。 たとえばある一定期間テストを実施すると、その間に行なわれたプレイ中の全ての反応が収集される。そして反応にかかった時間、失敗した回数、それらがどう推移していったのかがデータ化され、グラフとして確認することができるのだ。 ヤコブス氏は次のように付け加える。 「データを取ることができる。そして数字を見て、進歩を検証することができる。アプリではストップウオッチでプレイを停止するだけでなく、進歩しているかいないか、それとも横ばいかということを確認できる」 「そのデータを理解し、アスリートの進歩にどう役立てるかが重要なのだ。確かに楽しいトレーニングだ。誰もが、光を使って行なう作業や、その光に反応するのを気に入っている。でも、実際にそのトレーニングから何を得ているのかを理解するためには、プロの立場でデータを分析する必要がある。それができれば、アスリートを進歩させることができるんだ」 ブレイズポッドは2017年に設立された新興企業であるが、より多くのドライバーやアスリートに価値をもたらすことができるはずだと、ヤコブスは語る。 「彼らがウォームアップにこれを使ってくれているのは、素晴らしいことだ。しかし、他の用途にも使うことができるんだ」 「強みを伸ばすため、そしてコンディションを整えるトレーニングにそれを使っている可能性がある。また、リハビリのために使うこともできる。あるいは、意思を決定するスキルや効率を向上させるためにこれを使うこともできる」 「彼らのような速度でドライブするなら、左右から来る別のマシンに素早く反応しなければいけない。そのためには、僅かな時間で決断を下さなければいけないんだ。我々はその手助けをすることができるし、我々にできることはたくさんある」 「またアメリカンフットボールのラインバッカーと仕事をする場合、彼らは相手のクオーターバックにタックルするために、できるだけ早く特定の刺激に反応する必要がある。我々は、そのスポーツ特有の訓練を考え出さなければいけないのだ」 「つまりライトを使用して、特定のターゲットのためにそれを設定しなければいけない。同じライトを使って、同じような結果を得る……つまり反応の速いアスリートを生み出すのだ」 「スポーツでは、ある意味考え方が保守的なところもある。でも確実にメリットがあることを理解してもらうために、それを推し進めていかなければいけない。でもF1のようなスポーツでは、常に前進するためのモノを探している。それは、とてもエキサイティングなことだ」
Jonathan Noble