「庭は南向きに」はもう古い!?家を建てる前に知っておきたい「庭づくりのQ&A11」。建築家と造園家が素朴な疑問に答える
9 プライバシーを守りつつ 安心して庭を楽しむ工夫を知りたいです。
敷地条件や周辺環境によっても方法はさまざまですが、住宅密集地の場合は特に周囲の視線を制御する必要があります。 「都市型住宅であればコートハウス型に庭を設けてプライバシーを確保する。敷地を囲うことで建築と庭の一体感も生まれます」(造園家・荻野寿也さん)というように、庭を建物内側に組み込むコートハウスは最もポピュラーな解決策。 また、「目隠し壁など建築でプライバシーを守りつつ、開放的な空間をつくり出すことは可能。庭だけで解決しようとせず、建築のつくり方から考えます」(建築家・前田圭介さん)という意見も。 さらに、「常緑樹で外部からの視線をコントロールしてプライバシーを守る」(建築家・高橋昌宏さん)というように、樹種選びで解決する方法もあります。 いずれにしても、周囲の視線が気になって庭に出なくなってはもったいないので、設計段階で外部からの視線をシミュレーションしながら調整することが重要です。
10 都市部の住宅密集地で 上層階に庭をつくる際の注意点を教えてください。
「土の重量も構造計算に必要な要素なので、初期段階から造園計画を進めることが大切」(建築家・高取愛子さん)と、上層階の場合は特に重量に関する注意が必要です。 そういった観点から「軽量人工土壌を用い、必要なポイントのみ植栽を植えることで重量を抑える。表面は砂利や苔などのグランドカバーを施して一体感を出す」(建築家・前田圭介さん)という方法も。 プランターを入れる方法もあるが、「やはり直接、土に植えるほうが大地に根を張る自然の力を感じられるので、軽量土壌で仕上げるのがおすすめ」と荻野寿也さん。 また、「近隣への落ち葉の飛散を考えると、落葉の少ない常緑樹のほうがいいと思います」(建築家・小川博央さん)、 「屋上の場合は日射、風にさらされるので乾に強い樹種を選定する」(造園家・荻野寿也さん)など、樹種の選び方にも注意が必要。
11 庭と建築の相乗効果を高めるには どんなアイデアがありますか?
「東西南北それぞれの陽光の特性や南中時の太陽高度などを精緻に捉えることが大切。その読み取りによって建築の居場所と庭のシークエンスを創出できて、庭と建築の相乗効果を高めることができます」(建築家・前田圭介さん)。 「自然に包まれて過ごす空間と、自然と一定の距離をとった空間を共存させる。そのことで空間に深みが生まれると同時に、光の当たり方で多様な表情を映し出してくれます」(建築家・松山将勝さん)。 「庭から設計する。すると自ずと建築の窓の取り方、サイズ、プロポーションが導かれる」(建築家・谷尻誠さん)と、設計者の力がものをいうところ。
家づくり・庭づくりを検討している方は、是非プロの意見を参考にしてみてくださいね。