EV失速で世界「PHEVバトル」が始まった! 欧米&中国メーカーが続々と新型を投入
中国BYDのPHEV(プラグインハイブリッド)が売れに売れているという。それに呼応するように欧米の自動車メーカーの動きも活発化。ニッポン勢は大丈夫なのか? 販売が鈍化するEVから次のフェーズに移行しつつある脱炭素カーの舞台裏を徹底取材してきた。 【写真】日産「エヴォコンセプト」「エラコンセプト」 ■販売急伸! BYDのPHEV 欧米を中心に販売が急失速しているEV。そんな中で注目を集めているのが、中国の二刀流自動車メーカーBYD。実は今年上半期にBYDがマークした新車販売台数は161万台超。衝撃はその内訳で、なんとPHEVが88万1000台(前年同期比39.5%増)を叩き出し、EVの販売台数を上回ったのだ。 裏を返せば世界最大のEV市場を持つ中国に異変が起きているともいえる。しかも、BYDは"自動車強国"を掲げる中国を代表する自動車メーカーで、輸出にも注力している。今年5月には、BYD初となるPHEVのピックアップトラック・シャークをメキシコで発売して世界的ニュースとなった。 ニッポン市場ではEV専売なので、多くのメディアがかたくなにBYDをEVメーカーと喧伝しているが、同社は2008年に世界初の量産型PHEVを開発したパイオニアであり、"絶対王者"だ。そんなBYDがPHEVの販売に本腰を入れ始めたのだ。 PHEVの動きはBYDだけにとどまらない。中国自動車大手のジーリーと仏ルノーが設立した新会社ホースもPHEVに搭載する新型エンジンの生産をスタートさせ、EVシフトを声高に叫んできた独フォルクスワーゲンや独メルセデス・ベンツもPHEVを続々と導入。 米フォード、米ジープ、独BMW、独アウディ、英ベントレー、英ジャガー、英ランドローバー、英マクラーレン、伊ランボルギーニなども新型PHEVを市場に投入している。この活発な動きをどうとらえるべきなのか? EVシフトはどうなったのか? 自動車誌の元幹部は苦笑いしながらこう言う。 「欧米の自動車メーカーは海千山千。これまでは投資などを呼び込めるため、EVシフトを掲げてきましたが、裏では市場の先を読み、シッカリとPHEVの開発を行なっていた。だから今、PHEVが続々と登場しているわけです。 事実、"35年までに完全EV化"を掲げてきた米ゼネラル・モーターズのメアリー・バーラCEOも戦略を修正し、27年までにPHEVを再導入すると表明済みです」 ちなみに9月10日、都内で開催された新型フィアットEVの報道発表会で、欧米自動車大手のステランティスの日本法人社長である打越晋氏もこう語っていた。 「(ステランティスは)PHEVやMHV(マイルドハイブリッド)など多様性のあるラインナップを用意し、選択の喜びを提供する」 ■日産がPHEVを自社開発するワケ そんな中、ニッポン勢にも動きが出てきた。9月23日の日本経済新聞の1面トップに日産がPHEVを自社開発するという活字が躍ったのだ。 「実は今年4月、日産は中国で開催された『北京モーターショー2024』にセダンタイプのエヴォコンセプトと、SUVタイプのエラコンセプトという2台のPHEVを披露し、26年度までに中国市場に投入すると発表している。 この北京モーターショーの会見で日産の内田誠社長は、『中国の自動車市場やユーザーニーズは大きく変化している。中国で持続的な成長を果たすには、この変化に対応していく必要がある』と訴えました。 要は中国市場の変調を把握した動きですが、当然、世界市場も意識しているはず」(自動車誌の元幹部) 一方、4年連続世界新車販売トップに立つトヨタも抜かりはない。すでにプリウス、クラウン(スポーツ)、ハリアー、RAV4、新センチュリーにPHEVを搭載。 しかも、10月1日からプリウスのPHEVにエントリーモデルを投入した。さらにトヨタの高級車ブランドであるレクサスのRXとNXにもPHEVを用意している。EVに関しては市場の縮小もあり世界生産を26年に100万台程度と計画を修正したが、その一方でPHEVは拡充する方針もキッチリ掲げている。 三菱も準備万全で、伝家の宝刀ともいえるアウトランダーPHEVを改良し、ブラッシュアップ! 10月1日に欧州で初披露した。