ドラマ『ライオンの隠れ家』は家の中に隠されてきた「障害」や「虐待」を外へ引っ張り出そうとする物語
みっくんは街へ出て行く
みっくんはどんどん街に出て行く。みっくんが日中に通っているのは「PLANET ELEVEN」で、アート活動を行っている事業所のようだ。 第3話では、地域の動物園で行われる「動物アート展」に、「PLANET ELEVEN」の作家として参加することになる。当初は作品の展示のみだったが、体調を崩した仲間に代わって、みっくんがライブペインティングを行うことになった。そうした“ハレの場”にもどんどん出て行く。予定が崩され、パニックになっても、巻き込まれていく。 「さくらんぼ教室」にも通っている。「さくらんぼ教室」は実在し、自閉スペクトラム症監修として本作に携わっている。発達障害のある2歳から社会人までが学ぶ教室である。 兄弟の両親は、すでに亡くなっている。兄の洸人が1人でみっくんをケアしているが、街へ出て行くことで、たくさんの関わり合いが生まれている。発達障害は、社会モデルの障害と言われる。障害は個人のなかではなく、社会の側にあるとする考え方だ。本人を隠したり、自己責任で個人の努力を強いたりしても、そこにある問題は解決しない。 私は以前、取材でstudio COOCAを訪れた。みっくんが通う「PLANET ELEVEN」のような場所で、障害のある人々が自由にアート活動をしている場所だ。創業者の関根幹司さんは、彼・彼女らを街にどんどん出して行った。幹司さんによれば「買い方がわからないから、万引きまがいのことをしてきてしまう」こともあったという。最初は、店からクレームが入った。しかし、話してみると、店側も彼・彼女らのことを知る機会がなかっただけだった。 幹司さんたちは職員会議をして、クレームを受けないために彼・彼女らを「隠す」のではなく、「今後、絶対に行けるようになる支援をしていこう」と決めた。人類の長い歴史を振り返ってみると、「1人で生きられない人は放っておけばいいと考えることもできたかもしれない。けれども、ケアすることで人類全体は生き延びてきた」と幹司さんは考えている。