NGT48暴行事件が突きつけるアイドル運営の難しさ “接触”スタイルは限界?
ネットでファンとつながるプロ意識のないアイドルも
AKB48では、2014年に岩手県で開いた握手会でメンバーがノコギリを持った男に襲われ負傷するという惨事があった。一歩間違えれば生命の危険もあった事例といえる。48グループのように予算が潤沢なメジャークラスでもこのような事件は起きるわけだが、いまや全国に存在するローカルアイドルになってくると、対策と言っても限界があるのが実情だ。 「山口さんのケースでも新潟という地域性が要因の一つにあるという指摘がありますが、素人レベルの運営がブームに乗じて作ったローカルアイドルになるともはや隙だらけ。ツイッターなどネットでのコミュニケーションもストーカーの潜在的リスクの温床となっています」と話すのは、週刊誌の40代男性編集者。 「小さな事務所にとってコストをかけず情報発信できるSNSは、便利なPRツール。イベントとイベントの合間の期間も、コメント欄などでアイドルとファンがコミュニケーションも取れる。ところが、直接本人にメッセージを送れるDM(ダイレクトメッセージ)などを利用し、アイドルとファンがつながってしまったケースもある。本来、個人的やりとりは厳禁ですが、彼氏の写真を待ち受けにしてしまうようなプロ意識の乏しいアイドルもいるし、小さな事務所では監視の目が行き届かない」(前出・週刊誌編集者)
自宅マンションで襲われたローカルアイドル
つながりを持ったファンが恋愛感情をこじらせてストーカーと化すと、事件に発展しかねない。山口さんのケースと似た事件が、以前、ローカルアイドルグループのメンバーに起きたという。自宅マンションの玄関でファンに襲われたのだ。そのマンションには同グループのメンバーが複数人住んでおり、寮のような形で事務所が借りていたという。 「イベント後、マネージャーがメンバーを送り届けたところ、1Fの物陰から駆け込むようにエレベーターに男が乗り込んできたんです。見覚えある感じがしたので警戒はしたものの、男が途中の階で降りたためホッとしてしまった。マネージャーはメンバーが住むフロアまで送るとそのままエレベーターで帰ってしまった。ところが、メンバーが自室へ向かうと、先ほどの男が非常階段を駆け上がってきており、驚いて立ちすくむメンバーを部屋のドアに押し付けたんですよ」と話すのは、元芸能事務所社長の50代男性だ。 幸い、メンバーが悲鳴を上げると男は逃げて行ったという。後日、近隣の監視カメラの映像をもとに犯人は逮捕されたが、何度かイベントやコンサートにきたことのある男だったとか。マンションの場所は、尾行で割り出したと思われるそうだ。 「たまたまメンバーの中でも声量がある子なので悲鳴の効果も抜群だったんでしょうが、部屋のドアを開けた後だったらどうなっていたか冷や汗ものでした」(前出・元芸能事務所社長) まさに危険と隣り合わせのアイドル活動だが、十分な警備体制を整えようと思えばコストの高さで採算の合わないものになるという。 「基本的にファンはアイドルを応援しても傷つけたり迷惑はかけない、という性善説にある程度は頼るしかない。大多数の善良なファンを、疑いの目で見るのも疲れますしね」(前出・元芸能事務所社長) この元芸能事務所社長は、その後もいろいろあってアイドル業からは撤退したという。何もイベント自体が悪いわけではないだろうが、こうした事件が続くと、距離の近さを売りにするより、やはりステージなり作品なり”芸事”で集客できる、原点ともいえるスタイルに回帰するしか解決方法はないような気もしてくる。ただ、一度、接触イベントに慣れてしまったファンにそこへ戻ってもらうのは相当難しそうでもある。 (取材・文:志和浩司)