甲子温泉(福島県西郷村)の歴史を一冊に 「白河甲子紀行」出版 県史学会会員・幕田さん監修、翻刻
福島県西郷村の甲子温泉に関する江戸時代の二つの文献をまとめた「白河甲子紀行」が出版された。県史学会会員の幕田一義さん(73)=伊達市梁川町=が監修と翻刻を担った。長く秘湯として知られ、今も多くのファンが足を運ぶ甲子温泉の歴史と魅力を伝える。 収録されたのはいずれも白河藩士による文献。1740(元文5)年に英翁(本名・溝口清内)が記した「甲子温泉山中図解」と、1808(文化5)年に絵師・大野文泉が描いた「奥州白川甲子山真景」。甲子温泉山中図解は英翁が友人たちと連れだって温泉に出かけた際の紀行文。奥州白川甲子山真景は、白河藩主松平定信の次男、定栄の紅葉狩りに同行した文泉が、定信の命を受け行程の風景を描いたものだ。 幕田さんは「松浦丹次郎」のペンネームで執筆、文献に詳細な解説を加えた。甲子温泉そのものにもスポットを当て、江戸期以降の歴史を紹介したほか、温泉のシンボルの一つともいえる甲子山大黒天碑の由緒に関する入念な調査結果も掲載した。
幕田さんは郷土史に造詣が深く、「ふくしま伊達の名勝 高子二十境~高子熊阪家と白雲館文学~」で2013(平成25)年の第36回福島民報出版文化賞正賞を受賞している。歴史研究で「甲子温泉山中図解」を知った。同書の調査を進める中で「奥州白川甲子山真景」とも出合った。2人の著者の、ひたむきさに胸を打たれ、紹介を決意したという。元湯甲子温泉会長の草野好夫さん(77)は「江戸時代の温泉の様子を伝える貴重な文献をまとめていただき、感謝します」と話している。 問い合わせは土龍舎へ。