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イングランドのリーグ4部の弱小サッカークラブ“スティーヴネイジFC”を世界から注目されるチームに押し上げた、ゲームを利用した天才的広告戦略

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文:ミル☆吉村  イギリスのハートフォードシャーにあるスティーヴネイジは、ロンドン郊外のベッドタウンのひとつ。人口9万弱のこの街にある弱小サッカーチーム、スティーヴネイジFCがにわかに注目を集めることになった奇跡をご紹介しよう。 4部リーグで降格の危機に  スティーヴネイジFCが所属するのは、イングランド4部リーグに相当するEFLリーグ2だ。街の出身者にはアシュリー・コールやジャック・ウィルシャーといった元代表クラスのプレイヤーがいるが、彼らがキャリアの始まりに選んだのは地元スティーヴネイジではなくロンドンや近隣のワトフォードのクラブ。それもそのはず、同クラブがようやくプロリーグに昇格したのは2010年のことだ。  2019-20シーズンも低迷し、降格争いの相手が賃金未払いに絡んだペナルティ裁定を受けなければ降格になっていたスティーヴネイジFCだったが、一方でネットでは真逆のことが起こっていた。 新スポンサーが仕掛けた大胆な戦略  というのも、エレクトロニック・アーツのサッカーゲーム『FIFA 20』にギリギリ収録されているレベルのスティーヴネイジだが、イギリスに留まらない世界中のプレイヤーがスティーヴネイジFCにリオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドといった世界最高クラスの選手をかき集めてプレイするようになり、キャリアモードで一時もっとも使われるチームとなって、SNSでは25000ゴール以上がシェアされるという事態になっていたのだ。  そんな奇妙な出来事が起きた発端は、このシーズンが始まる前の6月、世界的ハンバーガーチェーンのバーガーキングと2シーズンのスポンサー契約を結んだことにさかのぼる。新ユニフォームにはバーガーキングのロゴが入ることとなり、露骨でネタっぽいデザインに現地イギリスメディアやファンからの反応はかんばしくなかったが(サッカー専門誌FourFourTwoには“今季のダサユニフォーム1位”に選ばれている)、これは次のフェーズのための仕掛けに過ぎなかった。  ここでサッカーゲームに詳しくない人のために説明しておきたいのが、『FIFA』シリーズに収録されるほぼすべてのチームで、スポンサーロゴを含んだユニフォームデザインがゲーム中で再現されるということ。それは4部リーグだろうとなんだろうと変わらない。つまり『FIFA 20』でスティーヴネイジFCを選べば、バーガーキングロゴ付きのユニフォームでプレイできる。  そしてクラブとバーガーキングは、10月に満を持して“スティーヴネイジ・チャレンジ”という企画を発表。『FIFA 20』でスティーヴネイジFCをバーガーキングロゴのユニフォームを使ってプレイしてお題に挑み、SNSにゴール映像などを投稿することで、報酬として宅配サービスのUber Eatsの注文時にハンバーガーなどを貰えるようにしたのだ。  こうしてバーガーキングはエレクトロニック・アーツや有名サッカー選手と直接タイアップすることなく、ゲーム映像の中のユニフォームを通じてロゴがシェアされまくり、スティーヴネイジ配信をするYouTuberなども登場するに至って抜群の広告効果を得たというワケ(この企画を手掛けたDAVID The Agencyは広告賞を受賞している)。  これだけならローカルなサッカークラブがスポンサー料をダシに大企業のネタに使われた話で終わってしまうが、企画を通じて世界からスティーヴネイジFCに注目が集まったことで、クラブ史上初めて公式ショップでユニフォームが完売するにいたったとか。  なお現在スティーヴネイジFCは2020-2021シーズン第2節を終了した時点で1勝1分の成績を残し、今度こそ自力残留を果たすべく奮闘している。

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