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行定勲監督「映画には即効性がない…」震災時に感じた“音楽”への対抗意識

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禁酒法の時代に、こっそりひそかに経営していたBAR「SPEAKEASY」。2020年の東京の街にも、そんなひそかなバーがありました。月曜から木曜の深夜1時にOPENする“ラジオのなかのBAR”「TOKYO SPEAKEASY」。各界の大物ゲストが訪れ、ここでしか話せないトークを展開するとか、しないとか……。 6月23日(火)のお客様は、映画監督の行定勲さんと音楽雑誌「rockin’on」編集長の山崎洋一郎さんです。

◆行定「元気にするのは、みんな音楽だな…」

山崎:僕、音楽雑誌の編集長なので、普段は音楽ばかり聴いているし、ミュージシャンと交友関係があったり、仕事で音楽関係でほとんど塗りつぶされているんですけど、新型コロナがきて、コンサートやライブとかも全部なくなって。でも、そんななかでも、いろんな音楽シーンで起きていること、ミュージシャンがやろうとしていることを“伝える”というのが自分の仕事だと思っていて。 それをやっているさなか、行定さんの「きょうのできごと a day in the home」っていうYouTubeで配信された映像作品に、僕はちょっとショックを受けました。 行定:本当ですか。 山崎:そうなんですよ。普段はどちらかというと、“映画音痴”と言っていいぐらい映画の知識もないんですけど、あれはやっぱり“画期的だな”と思って。まず、現状、人が集まれないっていう事態を受けて、リモートですべての撮影を行って、それからいわゆる“リモート飲み会”が流行り出したときに、そのシチュエーションをそのまま生かした映画を撮られて。しかも、それをYouTubeで即配信するっていう。 通常の映画の常識的で考えたら、すごく異色なやり方だったと思うんですけど、それを本能的にパッとやってしまうという感覚が、僕の言葉で言えば、ものすごい“ロックだな”というか。本当に何か言いたいことがあったら、パッとギターを持って、スリーコードでもいいから“とにかく歌っちゃう”みたいな、そういう感覚があって。思わずブログで書いちゃいました。 行定:僕のところにも書き込みがいろいろあって。「山崎さんが紹介していたので観ました」とか。でも、“山崎さんって誰だろう?”と思って。そのときは、山崎賢人かなと思ったんですけど(笑)。そのあと、“ロッキング・オンの山崎さん”ってキーワードが出てきて。 ブログにも書いていただいて、山崎さんは、こういう“作品をちゃんと伝えられる言葉”が強いなと。そう思ったのは、ブログのなかに“即時性”という言葉が出てきていたんですよね。“なるほど、こういう言葉で言うとみんなに伝わるんだな”と思いましたし、逆に山崎さんの文章が、ものすごく僕の支えになったというか。 山崎:そうなんですか!? 嬉しい。 行定:“自分のやりたかったことは何なのか”って、山崎さんの言葉を見て、あらためて考えてみたんですよ。そのときまでは、正直に言うと音楽に対する対抗意識があったんです。要するに即効性ですね。“映画は即効性がない”っていうことを、僕は熊本出身なので、熊本の震災のときも思ったし、東北の震災のときにも感じたんですよね。“元気にしているのは、みんな音楽だな”と。 音楽の方たちは、ギター1本、アカペラでもみんなが喜ぶ。だけど、映画家の我々は、避難所とかに映画を持って回って観ていただくことはできても、じゃあ自分の映画を見せられるかって言うと、どこかで“死”を描いていたりとか……。 だから、3.11以降にボランティアに行こうって話が出たとき、僕ら映画監督たちは、結局、(映画を)上映するよりは、物を運んだり、仮設住宅に引っ越しがある方々のお手伝いをしたりして、肉体労働をしたっていう。 そのときに、音楽の有効性を感じたんです。(今回も)早速、星野源さんがね、「うちで踊ろう」を配信して“うわぁ、天才っているんだね”と思って。だったら俺は、とにかく、俺たちの文化も大変なときなんだけど、いやいやいや、やれるのは“映画しか撮れないだろう”と思って。じゃあ、みんな家にいるし、“映画やってみるか!”ってことだったんですよ。 山崎:僕も正直驚いたんですよ。“映画から、こんなに素早いリアクションが生まれた!”っていう。だから、ちょっと失礼な言い方かもしれませんが、「映画からこういうことが起きたことに僕は驚いた」みたいなことを書いたんですけど、それぐらい、やっぱりそういうイメージがあったんですね。 だから、行定さんが考えていたことは、結構皆も考えていたことなんじゃないかなって思うんですけど、行定さんの場合は、“何か面白い!”とか、それから“早く届けたい!”とか、本能的なところがすごくあって、以前の作品を観せていただいたときも感じたのですが、ちょっと誤解を生む言葉かもしれませんけど、行定さんのなかに“俗っぽさ”というか。「“今”に対して、すごく関わりたい」というところが、すごくいい形で今回も出たんじゃないかなと思うんですよね。 行定:うれしいですねぇ。 (TOKYO FM「TOKYO SPEAKEASY」6月23日(火)放送より)

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