アフリカの職人雇用を促すブランド「ブラザー ヴェリーズ」。
NYに拠点を置くシューズブランド、ブラザー ヴェリーズ(BROTHER VELLIES)の商品の大半にはリアルなレザーやファーが使われている。それでもなお、環境問題に敏感な若年層にも支持されている理由は、デザインのみならず創設者が探求する生産背景にあるようだ。
「サステナビリティ」とリアルなレザーやファー。環境や動物愛護の観点からみると、これらは相反するものと思われがちだが、必ずしもそうだとは限らない。 その一例が、NY・ブルックリンを拠点にするブラザー ヴェリーズ(BROTHER VELLIES)だ。創設者のオーロラ・ジェームズは、アフリカの畜産農場の生産過程で出る副産物のレザーやファー、またヴィンテージのそれらを製品に使用している。当初、彼女が訪れた農場では、長年それらが活用されずに廃棄されていたという。その実情を知った彼女は「廃棄物」として諦めるのではなく「素材」に転換し、シューズを製作する職人の雇用を促すというサステナブルな連鎖を生み出したのだ。 「素材がどこから来ているのか? 誰によって調達され、誰の手で作られているのか? どのようにして消費者に届くのか? サステナビリティについて考えるときに大切なのは、始まりから終わりまでのプロセスです。完璧なサステナブルファッションはありませんから」とジェームズは語る。 一貫性のあるプロセスに責任をもつことが重要だと考える彼女は、素材を供給する農場や職人の工房に自ら赴いているというから驚きだ。今では、南アフリカ、ケニア、ナイロビ、エチオピア、モロッコなど世界10カ国以上の工房と公正な取引のもと協働。レザーは植物タンニンでなめされ、厳選されたリサイクルタイヤや木材など環境負荷の少ない素材と組み合わせて、丁寧にハンドメイドされている。
職人が減少した原因は過剰な寄付?
当初、ジェームズはブランドを立ち上げようとは考えていなかった。だが、父親がガーナで生まれ育ったこともあり、強いつながりを感じていたアフリカへの旅が、人生を大きく変えることに。現地に根付く伝統的な技術に感銘を受けると同時に、著しい職人数の減少にショックを受けたという。減少の主な理由は、アメリカから過剰に寄付される物質だ。物質的に恵まれた現地の人がローカルなシューズを買う必要性はもはやなくなってしまった。彼女はすぐさま手持ち金を使って、閉鎖の危機にある工房にシューズを数十足オーダーした。完成したシューズをNYに持ち帰り、フリーマーケット「へスター・ストリート・フェア」で販売。それは瞬く間に完売したという。 ブランド名は、ジェームズが最初に南アフリカで作り始めた伝統的なデザートブーツ「vellies」と、靴を通じて絆を感じるアフリカの友愛「brotherfood」に由来する。 「多くの人々がアフリカからテーマや着想源を得ることが多いけれど、私にとって重要なのは、アフリカの人々から直接インスピレーションを得て、彼らと継続的に協力してものづくりを実現することです」