<特別警報>“空振り”でも……運用1年で見えてきた意義と課題
これまでに3件の発表事例
特別警報が発表されたのは、この1年で3事例あります。第1号は、2013年9月16日。京都府・福井県・滋賀県に発表された「大雨特別警報」で、台風18号の大雨によるものでした。次が今年7月に沖縄地方に出された台風8号による「大雨・暴風・波浪・高潮特別警報」。そして直近のものが8月の台風11号の接近による、三重県に対する「大雨特別警報」です。 「特別警報は重大な災害に対する最大限の警戒を呼び掛けるものです。空振りが多ければ、特別警報そのものへの信頼が低下します。観測技術やスパコンなどによる解析予測技術が上がったため、極めて蓋然性の高い情報だということで発表することができるようになりました。技術的な改良や改善はすぐにできるものではありませんので、まずは『特別警報の意味』が正しく理解されるように周知していくことが大事だと思っています」」(気象庁総務部企画課 木俣昌久防災企画室長) 災害が起こると、もう少し早くわかっていたら……と思うことは無数にあります。しかし未来を予想することが難しいのも事実です。特に近年はゲリラ豪雨や広島市の集中豪雨災害、竜巻災害など、局地的に、短時間で発生し甚大な被害を伴う災害も続出しています。
「局地的災害」への対応も課題
しかし、特別警報は「府県程度以上にわたる広い範囲で、甚大な災害が同時多発的に発生」する可能性があるものについて発表されます。局地的な災害への対応は難しい枠組みになっているのです。 「局地的に激しい雨が増えているのは事実で、そういう自然現象の予想は難しいのも事実です。気象庁の責務は気象状況の的確な把握と予測、そしてそれを的確にお伝えするというものです。災害の現場で救助活動や避難誘導する能力を持つのは、その地に根ざす自治体ですから、自治体の方々が情報をうまく活用して、行動を迅速にできるようにするための勉強や啓発、周知活動はこれからも必要だと思っています」(木俣防災企画室長) 局地的な災害に対しての注意喚起は、大きな課題といえます。そして周知活動を含めた、災害情報の相互コミュニケーションも大切です。 「2012年、ニューヨークを襲ったハリケーン・サンディでは、地下鉄が浸水し、ニューヨーク証券取引所も休場するなど、経済活動に大きな支障が出ました。日本には、このような経済活動を停止せざるを得ないような大規模災害の発生が予想される際に出される情報の整備が進んでおらず、個人的には、特別警報にはそのような役割を期待していたところです。しかし、実際の運用や受け手が望む役割もそのようにはなっていないのが現状です。 特別警報に求める役割について、情報の出し手と受け手でのコミュニケーションを図る必要があると思います」(本間助教) 運用から1年。課題とともに期待もあるというのが特別警報です。今後の環境整備に期待したいところです。