<特別警報>“空振り”でも……運用1年で見えてきた意義と課題
2013年8月30日から気象庁で運用がはじまった「特別警報」。気象庁はこれまでも大雨、地震、津波、高潮などにより重大な災害の起こるおそれがある時に、警報を発表して警戒を呼びかけていました。特別警報は、これに加え、警報の発表基準をはるかに超える豪雨や大津波等が予想され、重大な災害の危険性が著しく高まっている場合に発表し、最大限の警戒を呼びかけるというものでした。命にかかわる情報を判断するために重要なのは認知度です。特別警報はどれだけ認知されているでしょうか。また運用1年で見えてきた課題は何でしょうか。 【図表】「警報」をはるかに超える「特別警報」とは?
発表されたけど「被害がない」?
「私が今年2月に東京都と京都府の一般市民を対象としたインターネットアンケート調査を行ったところ、京都府では特別警報の名称を知っているのが89.4%、意味を知っているのが61.7%だったのに対し、東京都では名称を知っているのが77.5%、意味を知っているのが43.6%でした。京都府では昨年9月の台風18号接近時に『大雨特別警報』が発表されたこともあり認知度が高かったのです」 こう言うのは京都大学防災研究所気象水文リスク情報研究分野の本間基寛特定助教です。本間助教の調査のあと、気象庁も3月28日に「特別警報の認知度等に関する調査結果」を発表しました(サンプル数:2800件)。これによると『「特別警報」という言葉を見たこと・聞いたことがある人』は 62.3%。また、「特別警報の意味に関する理解」は「回答者全体でみると、41.3%の人が正しく理解」しているという結果でした。 本間特定助教は自身の調査を踏まえ次のように言います。 「情報の受け手側(特に一般市民)が求める情報は、自らの居住地が危険なのかどうかで、『広域災害』かどうかは直接的には関係ありません。特別警報の性質については一般市民には十分に伝わっていないことから、『災害が発生したのに発表されない』または『発表されたけど、特に何も被害がなかった』といった印象を与えている面があるのではないでしょうか。情報の出し手である気象庁と受け手である自治体や住民との間で、防災気象情報全体における特別警報の位置づけに対する認識に相違が生じているように思います」 課題はありつつも、本間特定助教はその意義も認めています。 「昨年9月の台風18号では、京都府・滋賀県・福井県を対象に大雨特別警報が発表され、 由良川や桂川で越水による浸水被害が相次ぎました。堤防決壊による大規模水害という最悪の事態は免れましたが、紙一重の状況だったといえ、広域での甚大な災害が発生する可能性があったわけです。そういうことを伝える情報という意味では大変意義があったと思いますね」