韓国・伊大統領が “四面楚歌”でも強気なわけ 非常戒厳で謝罪から一転「退陣しない」 明日弾劾採決
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が出した「非常戒厳」。解除されるまでは約6時間程度だったが、その後の国内の混乱は続いている。野党は12月12日に2度目の大統領の弾劾訴追案を出した。14日に採決される予定だが、野党は仮に否決されても「通過するまで出し続ける」との構えで、落ち着く気配はない。そして捜査のメスはとうとう大統領府にも及んだ。こうした状況はいつまで続くのか。現地のジャーナリストが、非常厳戒が出された直後からの動きをリポートする。 【写真】日本とは全然違う韓国の国会はこちら * * * 非常戒厳──。それは歴史の教科書や映画、ドラマの中でしか触れたことがなかった言葉だ。現実にその光景を目撃する日が来るとは夢にも思わなかった。 3日午後10時20分ごろ、尹大統領は大統領府から緊急中継し、「徹底的に北朝鮮寄り勢力と反国家勢力を排除し、自由な大韓民国を守る」と述べ、非常戒厳と同時に戒厳司令部を設置し、司令官を任命。ニュースやSNSには武装した戒厳軍がソウルの国会議事堂に突入し、窓ガラスを破り、職員と衝突する様子がリアルタイムで映し出された。 翌4日午前1時、議長を中心とした本会議で非常戒厳解除を求める決議案が可決され、その3時間後、尹大統領は非常戒厳の解除を発表。戒厳司令部も即座に解散された。こうして、国民全体を混乱と不安に陥れた非常戒厳の夜は、わずか6時間で幕を閉じた。 ■国民からはため息 流血や大きな負傷者も出なかったことは救いだが、その余波は深刻だ。4日朝から、左派メディアは尹大統領と戒厳軍の行動を「内乱」と断じ、強烈に非難した。一方、これまで尹大統領や与党「国民の力」に肯定的だった保守系の朝鮮日報、中央日報、東亜日報も「民主主義社会では許されない行為」として尹大統領を批判し、さらには彼の弾劾の可能性に言及するなど、すべてのメディアが尹大統領に背を向けたのである。 ソウル駅では、電車を待ちながらテレビを見ていた市民が、画面に映る尹大統領に向かって「愚か者」などと大声をあげるなどしていた。その言葉に反論する人はおらず、むしろうなずいてため息をつく人らの姿が目立った。ソウル・汝矣島(ヨイド)の国会議事堂に行くと、市民たちが中央階段に集まり、尹大統領を批判しながら辞任を求める声をあげていた。