韓国・伊大統領が “四面楚歌”でも強気なわけ 非常戒厳で謝罪から一転「退陣しない」 明日弾劾採決
伊大統領を批判しているのはメディアや国民だけではない。非常戒厳に動員された部下たちまでも尹大統領に反旗を翻した。国家情報院の第1次長は、非常戒厳当日に尹大統領から直接連絡を受け、「政治家やメディア関係者を逮捕せよ」と命じられた、と暴露した。次長は命令について、「あり得ない。狂気の沙汰だ」として命令を実行しなかったと明かした。 その逮捕対象者のリストには、野党議員のほか、尹大統領の検察時代の後輩でもあり、与党「国民の力」の韓東勲(ハン・ドンフン)代表までが含まれていたという。ただ、この点について伊大統領はその後、「そうした事実はない」と韓代表に伝えたとされる。 動員された軍人たちも「尹大統領と国防部長官の不当な命令を遂行しただけだ」と国民に謝罪した。非常戒厳当日に国会議事堂に派遣された「707特任団」の団長は9日朝、大統領府前で記者会見し、「707特任団は国防部長官に利用された被害者だ」と発言した。 韓国の大統領は軍の最高司令官であり、軍人は大統領の命令に従う義務がある。これを拒否すれば罪に問われる。しかし、軍や国家情報院、警察でさえ、尹大統領の命令を「憲法違反」として拒否している。 ■内閣は全員辞任で前国防相は逮捕に 尹大統領は警察、検察、高位公職者の汚職を捜査する「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」など、すべての捜査機関のターゲットとなった。警察は9日、尹大統領を内乱罪の被疑者とし、出国禁止を申請。法務部はこれを受理すると、尹大統領に非常戒厳を出すよう建議したとされる金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防相が10日夜、内乱などの疑いで逮捕された。その日夜に自殺を試みたが、命に異常はない、との報道があった。 そして11日、警察は大統領府や警察庁、ソウル地方警察庁などへの家宅捜索に乗り出した。今後、伊大統領本人に捜査が及ぶのか……。 政治の現場も大きく動いた。各省庁の大臣の多くが非常戒厳に反対したのに尹大統領が強行した結果、こうした事態に陥ったとして、「内閣全員辞任」の意向を表明。6つの野党は合同で4日午後、尹大統領に対する弾劾訴追案を提出した。