<第94回選抜高校野球>センバツ21世紀枠 候補校紹介/3 県太田(関東・群馬) 本音ノートに、心一つ
部員22人の考えをつなぐ1冊のノートがある。その名も「つながりノート」。5、6人がグループになり、思っていることや気づいたことを書き込み、他の選手と共有する。 「練習から自分のことで精いっぱいになっている印象。周りを評価できる人が多くならないと試合の苦しい局面で何も言えなくなる」「何回もやっているトレーニングの動きが間違っていても気づけないのは周りの責任」。先輩、後輩関係なく本音をぶつけ合うことで課題を浮き彫りにし、全員が周りに気を配る意識を持とうとしている。 県内有数の進学校。文武両道を掲げるが、授業は夕方までの日もあり、平日の練習時間は2時間程度に限られる。そのため量より質で勝負しようと、選手主体で練習メニューを考える。投手▽捕手▽内野▽外野▽走塁▽打撃▽トレーニング▽体重――とテーマを設定し、週ごとにオフ以外の6日間のメニューを練る。各担当リーダーからの意見を参考に、つながりノートで出た課題も踏まえてメニューを考え、練習後に話し合う「振り返り」も欠かさない。 全員が集まれない新型コロナウイルス下でもノートは有効だった。昨秋の県大会は緊急事態宣言下で行われ、学校は分散登校となった。部員の半数程度しか登校できず、部活動も30分程度に限られた。しかし、チームとして徹底すべきことを次の日に登校する選手にノートで引き継ぎ、影響を最小限にとどめた。 大会中に学校で集まることができず試合後のミーティングもオンラインだった。岡田友希監督が「次の対戦校の分析もままならず、実戦感覚もない中で試合になるのが怖かった」と明かすほどだったが、県大会は8強入り。秋季関東大会を2020年まで2連覇した健大高崎との準々決勝も中盤まで互角に競り合った。 捕手で主将の小林風斗(2年)は「全員が主体性を持つことで、試合中に予想外のことが起きても修正できる」と実感する。思いを一方的に文字で伝えるだけでなく、意見交換で掘り下げて練習に落とし込む。SNS(ネット交流サービス)が盛んな時代で、ノートという名の「コミュニケーションツール」が絆を深めている。【浅妻博之、写真も】=つづく ……………………………………………………………………………………………………… ◇県太田 1897年創立の男子進学校。2020年度卒業生のうち135人が東大などの国公立大学に現役合格し、野球部からも多くの現役合格者を出した。卒業生に元検事総長で、日本野球機構の初代コミッショナーを務めた福井盛太氏がいる。