【最新ハッチバック比較】フォルクスワーゲン・ゴルフGTI x フォード・フォーカスST 前編
長年続いてきたゴルフGTIとの戦い
text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル) photo:Max Edleston(マックス・エドレストン) translation:Kenji Nakajima(中嶋健治) アウディ・クワトロの誕生から40年、ホンダNSXの誕生から30年が過ぎた。どちらも祝福すべきモデルだ。 【写真】ホットハッチ対決 ゴルフGTIとフォーカスST (91枚) しかし、もう1つ忘れてはいけないクルマがある。ホットハッチの起源の1台ともいえる、フォード・エスコートXR3の誕生から40年が経つのだ。それは同時に、現在まで続くフォルクスワーゲン・ゴルフGTIとの戦いが始まったことも意味している。 英国フォードが生み出してきたホットハッチは、ドイツ製ホットハッチとの戦いにどれだけ勝利してきたのだろうか。初期の頃は互角の勝負だったかもしれない。しかし、ゴルフGTIが5世代目へ進化した2004年以降は、フォードが劣勢だったと思う。 それは、最新版でも同じなのだろうか。8代目へ進化したフォルクスワーゲン・ゴルフGTIは、新鮮さを保つ4代目フォーカスSTと、どんな違いを見せてくれるのだろう。 スペックシート上では、内容は比較的近い。例によって、数字ではフォードの方が優勢。しかし現実の世界では、さほど大きな意味を持たないということも経験上知っている。 フォーカスSTの方が34psと4.8kg-mも力強く、車重はほぼ変わらない。トラクションが限定される前輪駆動ながら、0-100km/h加速の時間は0.6秒もゴルフGTIより短い。 英国での価格もフォーカスSTの方が安い。1000ポンド(14万円)も差はないものの、手に届きやすいことは確か。しかも標準装備はかなり充実している。
薄まったインテリアのクラス上位感
もしゴルフGTIに19インチのアルミホイールとアダプティブ・ダンパー、ヒーター付きのパワーシート、熱線入りステアリングホイール、バックカメラなどを装備すれば、価格差は一層広がる。フォーカスSTには、標準装備のモノたちだ。 実際にゴルフGTIのドアを開いてみよう。筆者が車内を観察して最初に気づいたのは、クラス上位感を一部で失ったということ。 ダッシュボードには高精細な大型モニターが据えられ、モダンな雰囲気にはなっている。足元を個別に冷やせるエアコン送風や、鼓動するように光るエンジンのスタートボタン、30色から選べるインテリア照明など、新しい機能もふんだんではある。 しかし筆者の場合、それらよりモニターでメニューを掘り下げる必要のない、シンプルな操作性の方が優先度は高い。質感の良いプラスティックが用いられていた方が、好ましく思える。 例えば、8代目ゴルフGTIでスタビリティ・コントロールをオフにしたい場合、モニターのメニューから車両の設定を選び、ブレーキの項目が表示するまでスワイプする。オフにしようとすると、画面には推奨しないというメッセージが表示される。 手間が増えたと感じるのは、筆者だけだろうか。小さなボタンを1回押すだけで、済むような内容だと思うのだけれど。