福田正博がパリ・サンジェルマンに感じた2つの「速さ」。日本サッカーとの大きな違いを指摘
福田正博 フットボール原論 ■パリ・サンジェルマンが、ジャパンツアーで数々のレベルの高いプレーを見せ、日本サッカーとのレベルの差を感じさせられた。福田正博氏が感じたのは、「速さ」の違いだ。エムバペ個人のスピードの土台となっている技術の違い、そしてチームとしての速さの使い方にも違いがあったと指摘する。 ◆【画像】エムバペ、メッシ、ネイマールらPSG選手たちのセレブぶりを紹介 エムバペのスピードを生かすための技術 パリ・サンジェルマン(PSG)がプレシーズンツアーで、川崎フロンターレ、浦和レッズ、ガンバ大阪と対戦した。長距離移動、時差などもあって、選手たちはベストなコンディションではなかったと思うが、それでも「さすが!」と唸らされるプレーを随所に見せてくれた。 もっとも印象に残っているのは、キリアン・エムバペは「とんでもなく速かった」ことだ。単にスピードがあるだけではなく、自分の武器を生かすための高い技術を持っていた。 エムバペの足の速さは、もちろん知っている。でも、目の前で彼のプレーを見ると、ボールコントロールの能力がすごく高いことに気づかされた。ちょっとやそっとのレベルではない。強いボールでも、浮いたボールでも、イレギュラーしようとも、一発で次のプレーに移るための最善の場所に、ピタッとボールを止める。 足の速さに目を奪われてしまうが、最初のボールコントロールで自身のトップスピードを生かす位置にボールを置けるからこそ、スピードという武器が最大限に発揮できるのだ。 世界最高の高給取り選手だから、当たり前と言ってしまえばそれまでかもしれない。だが、あのボールコントロールの巧みさこそ、子どもたちには見習ってほしいものだ。あのコントロール技術があるから、スピードを生かせていると知ってもらいたいと思う。
1試合のなかでのペース配分の違い PSGとJリーグ3チームとの試合で、もうひとつ「速さ」の部分で考えさせられた。それは試合のなかでのペース配分や、試合展開のメリハリのつけ方。これは以前から海外クラブの試合を見ていて感じることだが、そこでの差を感じた。 たとえばJリーグの試合展開は、とにかく速い。相手からボールを奪うと、攻撃に転じるためのパスを選択する。カウンター攻撃はもちろん、ボールポゼッションを高めるスタイルをとるチームでも、ボールを奪えばとにかく攻撃に移っていく。 相手が攻め込んでくれば、それだけ相手の守備陣形は崩れ、相手陣にはこちらの攻撃に使えるスペースが広がっている。だからこそ、攻守の切り替えは重要で、素早く攻めに転じることは間違いではない。 しかし、海外サッカーを見ていると、相手からボールを奪うと、パスをつないで相手のプレッシャーをかわしたあとは、攻撃をするともなくパスをまわしているだけのシーンも目にする。ボールを持っていない選手たちはゆっくりと移動し、息を整えているかのようでもある。 こうしたシーンは、PSGの選手たちも日本ツアーで何度か見せている。コンディションが万全ではなかったのも理由にあるかもしれないが、彼らがこういう時間帯をつくるのはリーグ戦などでも同じだ。これは、それもサッカーだという共通認識を持っているからではないだろうか。 それはなにかと言えば、1試合90分間を最初から最後まで走りきることの困難さ。これを理解しているからこそ、試合のなかのところどころで手を抜くわけではないが、呼吸を整えるかのように体力を温存するのも大切だとわかっているのだろう。 これができるのは、そういうサッカーを、子どもの頃から見て育っているのも大きい。だからこそ、攻撃のペースを落とすこともサッカーの一部だと体で覚えているのだろう。