シリアの刑務所、秘密の地下房見つからず 病院には拷問された遺体とHTS
シリアの民間防衛隊(通称「ホワイトヘルメット」)の救助隊員は10日、悪名高いサイドナヤ刑務所での捜索を終えたと発表した。秘密の独房や地下室に拘禁者がいる可能性が指摘され、捜索の専門家たちが作業にあたっていたが、誰も見つからなかったという。刑務所には、行方不明の親族を見つけようと集まった人たちが集まっていた。 ホワイトヘルメットによると、捜索専門家や捜索救助犬からなる複数のチームが9日、刑務所の構造に詳しい人たちの協力を得て、施設内とその敷地をくまなく捜索した。 「封鎖されたままの、あるいは隠されていた区域は、施設内に発見されなかった」と、ホワイトヘルメットは発表した。 他方で、アサド政権を倒した反政府勢力は10日、首都ダマスカスの病院の遺体安置所で拷問された痕跡がある約40体の遺体を発見したと発表した。 バッシャール・アル=アサド大統領を失脚させた反政府勢力「ハヤト・タハリール・アル・シャーム(HTS、「シャーム解放機構」の意味)」の指導者は、13年間にわたる内戦中に政治犯の拷問を監督した元高官たちについて、法的責任を問うと表明した。 HTSのアブ・モハメド・アル・ジョラニ代表は、元高官たちの名前を公表するほか、国外に逃亡した者については強制送還を進めていくと述べた。さらに、そうした元高官たちの所在に関する情報を提供した者には報奨金が与えられるとも付け加えた。 イギリスに拠点を置くNGO「シリア人権監視団(SOHR)」によると、アサド政権の刑務所では約6万人が拷問され、殺害されたとされている。 複数の人権団体によると、2011年の民主化要求運動をアサド大統領が弾圧して以来、10万人以上が行方不明になっているという。 トルコに拠点を置く「サイダナヤ刑務所の拘束者と行方不明者の協会(ADMSP)」は、2022年の報告書で、内戦開始以来この刑務所が「事実上の死の収容所」と化したと主張していた。 報告書によると、2011年から2018年の間に、3万人以上が刑務所で処刑されたか、拷問、医療の欠如、または飢餓によって死亡したと推定されている。 また、2018年から2021年の間に少なくとも拘束者500人が処刑されたと、釈放された元収容者の証言を引用している。 ADMSPはさらに、刑務所内に「塩室」が遺体安置所として構築されたと指摘。遺体がダマスカスのティシュリーン軍病院に移送され、登録後に軍用地に埋葬される前に、この「塩室」に置かれていたという。遺体は遺族に引き渡されることはなかったとされる。 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルはサイドナヤ刑務所を「人間の大虐殺の場」と表現し、処刑がアサド政権の最高レベルで承認されていたと主張。一連の行為は戦争犯罪および人道に対する罪に該当すると非難していた。 アサド政権はアムネスティの主張を「根拠がない」として否定し、シリアでのすべての処刑は正当な手続きを経て行われていると主張していた。 (英語記事 Syria rescuers end search for secret cells in notorious prison)
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