“歌うおじさん”平川美香、芸能界の洗礼に号泣した夜
おじさんキャラ、SNSで少しずつ浸透
芸能界の厳しさの洗礼を受け、号泣しながら、歌はやめて沖縄へ帰ろうと思ったという。 「そのとき、病気で倒れてリハビリを頑張っている友だちが沖縄にいて、ちょうどその子から電話がきたんです。振り絞るような声で、泣きながら『みーかー、私いま辛いんだ。歌って』って。自分は歌を諦めて沖縄に帰ろうと思ったけど、美香の歌を聴いたら頑張れると言ってくれた言葉がすごく衝撃で。もう、電話口で泣きながら歌って。そのときに、歌がダメだったから諦めて帰るっていうのは、まだまだ早いなと。歌がダメなら、まずみんなに観てもらえるようにいろんなことに挑戦してみようと。他のアーティストがしていないこと。芸人さんみたいに面白いことをしたり。自分しかできないことを詰め合わせて、ひとつの色付けをして行こうと。そこで、もともとプライベートでやっていた“おじさん”を組み込むことにしたんです。歌を聴いてもらうために、まずは観てもらおう、注目してもらおうと」 そのアイデアは、ネット時代にフィットした。平川のおじさんとしていろいろな場所で歌い始めると、SNSで「“おじさん”の格好で歌ってるやつがいる。歌うまいんだよ」といった口コミが拡散。少しずつ浸透して行った。結果、現在所属する事務所のスカウトの目にもとまった。
音楽仲間の逆風にも貫き通したスタイル
ただ、音楽仲間からは逆風も吹いた。 「『お前、バカにしてんのか』って批判されたりしましたね。確かに、見た目ふざけているじゃないですか。『そんな変な格好して歌う必要はないよ』とも、よく言われるんです。でも、そこで自分自身が決めたことからブレたらダメだと思ったから、批判されても貫き通して行こうと。今は少しずつ浸透してきて、最初にバッシングした人が『俺が間違っていたね。美香は自分が決めた道で、ちゃんと少しずつ有名になって行っているし、大事なことなんだね』って言ってくれたときには泣きましたね。迷いもあったけれど、貫いてよかったなって」 それもこれも、歌への気持ちが根本にあったからこそだ。いま、歌手として活動していて本当に楽しいと話す。 「商業施設のミニライブなんかだと、ちょっと離れたところからお客さんが歌声につられてやってきたら、“おじさん”が歌ってたってわかったときのびっくりした表情とか。こちらも歌っていて笑いそうになるくらい楽しい。つい最近は福岡で、ライブ後のCD販売に小っちゃい4歳ぐらいの男の子がお母さんときてくれて、お母さんが『息子が、平川さんの歌をお年玉使ってでもいいから買いたいって。そんなこと言ったの初めてなんですよ』って言うんです。やっぱり嬉しいですよね、歌い手としては」
幼い子から年配の人まで 歌に想いのせて届けたい
今後も、歌手という一本の芯をしっかりと成長させつつ、さまざまなことにチャレンジしていきたいという。 「エンターテイナーという部分では、たとえば最初に一人芝居をやった後に歌ったりとか。よくコロッケさんがやっているような感じの、ショーをやってみたいなっていうのはありますね。自分自身の良いところをぎゅっと1つに詰めて、見せる場を作れたらいいなと思っています」 想いをのせて、幼い子から年配の人まで伝わるような歌を届けていきたいと、目を輝かせる平川のおじさんだった。 (取材・文・写真:志和浩司)