「下位指名なら入団拒否」への批判は真っ当か? 知られざる“ドラフト順位格差”の現実
ドラフト1位なら積極的に起用する。指名順位というバイアス
先に書いたように、プロ入りする選手にはその時点でアマチュア時代の実績や「ドラフト順位」という格差が存在する。 NPBの支配下登録選手枠は70人。 そのうち、1軍登録枠は29人、試合に出場できるベンチ入りは25人と制限されている。(※ただし2020シーズンに関しては特別ルールとして、1軍登録枠は31人、ベンチ入りは26人と拡大している) つまり、それ以外の最大41人+育成選手は2軍(もしくは3軍)に籍を置くことになる。 ご存じのとおり、野球の試合に出場できるのは一度に9人まで。2軍、3軍では41人+αが9人しかいない「試合出場」を争うことになる。 当然、実力のある選手が試合に出場できるわけだが、そこで「指名順位」のバイアスは間違いなくかかってくる。 まずは、与えられるチャンスの数が違う。例えば1位指名選手の場合、当たり前のことだがチーム内ではその年の新人選手の中で「1番の評価」を受けて入団している。当然、指導者も積極的に起用することになる。将来の主軸候補であれば、多少の実力差には目をつむって、「2軍で我慢して起用する」ことも少なくない。
下位指名でも少ないチャンスをつかんでブレイクする選手もいるが…
一方で下位指名選手にはそんな「特別扱い」はほとんどない。彼らにとってチャンスは与えられるのではなく、つかむものだ。もちろん、そんな少ないチャンスをつかんで1軍の主力にまで上り詰めた選手も大勢いる。例えば、今季大ブレイクを果たした巨人の2年目右腕・戸郷翔征がそうだ。 昨年、彼がまだ2軍でプレーしている時期にインタビューする機会があったが、こんなことを話してくれた。 「僕はドラフト6位入団なので、そこまでチャンスを与えてもらえる立場ではない。だからこそ、少ない機会でしっかりと結果を残さないといけないし、そのための準備はしています」 戸郷自身、「下位指名でチャンスは少ない」ということを自覚した上で、そのチャンスをつかむという強い意志を持っていた。 実際にその後、「勝てば優勝」という大一番で1軍初登板・初先発。勢いそのままに日本シリーズにも出場するなど、「少ないチャンス」でしっかりと結果を残し、今季の飛躍へとつなげている。 戸郷の例からもわかるように、下位指名だからといってチャンスがもらえないわけではない。ただ、「少ない」のは事実だ。戸郷はそれをつかみ取ることができたが、そのチャンスをつかめず、結果的に2軍でくすぶったまま現役を引退する選手も大勢いる。