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地方テレビ局がジャーナリズムを体現? 映画『はりぼて』が描いた“日本社会の縮図”

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リアルサウンド

 富山市庁舎を見上げる男性。  これは話題のドキュメンタリー映画『はりぼて』のポスタービジュアルだ。しかし、このビジュアルをじっくり見てみると、「富山市庁舎に群がるカラスを見上げる男性」にも見える。 【場面写真】土下座をする議員も  本作は、富山市議会で起きた議員14人のドミノ辞職の内実を追いかけた作品だ。チューリップテレビという富山の小さなローカル局のスクープにより、政務活動費の不正受給が議会中に蔓延していることが発覚。架空の領収書を提出していた議員たちが次々に辞任し、1年間で14人もの議員辞職を引き起こすことになった。主人公となる二人のジャーナリスト、本作の監督でもある五百旗頭幸男氏と砂沢智史氏、2人の真実を追求し続ける姿勢は、映画のキャッチコピー「虚飾を剥がせ!」の看板に恥じないものだ。  「日本社会の縮図を描いた」と大きな評価を得ている本作。しかし、ポスタービジュアルのように少し視点を変えて観てみると、本作によって虚飾を剥がされているのは政治家だけではないことに気が付くだろう。本作は、メディア、それから一般市民の虚飾をも剥がしにかかっていると言えるのではないか。本作が私たちに突き付けたものは、果たして何なのだろうか。 ・不正が常態化している富山市議会  本作は、富山市議会での政務活動費を不正入手するために架空の領収書を提出し、多額の現金を横領していた議員が大量に存在した事実を明るみにする。  政務活動費とは、地方議員が政策の調査研究など活動のために支給される費用だ。公金であるため領収書の提出が義務付けられており、私的な目的のための使用は当然認められていない。政務活動費の不正受給は本作で描かれた富山市議会のみならず、様々な自治体で起きている。最も有名なのは、元兵庫市議員の(号泣会見で有名となった)野々村竜太郎によるものだろう。これをきっかけに全国で政務活動費に対する監視が厳しくなり、不正利用が続々と明るみにでている。本作で描かれる富山市議会のドミノ辞職もその流れにあったと言えるだろう。  その不正受給の手口は概ね領収書のちょろまかしである。懇意にしている印刷業者などから白紙の領収書を受け取り、実態のない支出の金額を自分で記入する、あるいは印刷部数や金額を後から書き加えるといった極めて朴訥な手口である。  一回ごとの不正受給は数万円程度のものであるが、富山市議会ではこうした領収書の偽造が常態化していた。たまりにたまった政務活動費の不正受給の総額は、全会派合計で6523万円に上る。富山は保守王国と呼ばれ自民党色が強い土地柄で、不正受給の多くも自民党議員によるもので、自民党会派による不正受給額は発覚したものだけで4528万円にもなる。しかし、裏を返せば残り2000万円は別の会派によるものであるわけで、これは富山市議会には、党派を超えて「領収書のちょろまかし文化」が根付いていたことを示している。要するに、みんな悪いことだと思っていなかったのだ。  では、その動機は何なのだろうか。これが実に、よく言えば人間くさい、悪く言えば卑小なのである。最初にスクープされた市議会のドン、中川元議員は釈明会見で涙ながらに「酒が好きなもので……」と語った。要するに、日々の酒代のために政務活動費をちょろまかしていたらしい。ため込んだ資金によって、社会を牛耳ろうとかそんな壮大な野望があるわけでもない、単に日々の小遣いのちょっとした上乗せが欲しかっただけというわけだ。

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