ヒュー・グラント、自分が「ロマコメ帝王になった理由」と「家族」を語る─“現役最高の性格俳優”になった彼の素顔
ヒュー・グラントといえば、『ブリジット・ジョーンズの日記』や『ノッティング・ヒルの恋人』といったロマンティックコメディの名作を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。こうした若かりし頃のイメージとは裏腹に、グラントはここ10年ほど、クセの強い風変わりな役を数多くこなしてきた。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が、グラントと彼の素顔を知る仲間たちに、「本当のヒュー・グラント」について聞いた。 【画像】ヒュー・グラント、自分が「ロマコメ帝王になった理由」と「家族」を語る
学生時代、先生に呼び出されて…
1994年、映画『フォー・ウェディング』に主演したヒュー・グラントは、チャーミングさと内気さを素敵に合わせ持つ、いかにも英国風のロマンティックな主人公として、自らの俳優像を確立した。それ以降、彼は世間のイメージと自分自身とのギャップに悩まされることになる。 だが近年、グラントが風変わりな、ともすると不気味な役柄を見事に演じるのを見てきた観客たちは、これまで彼のキャラクターをずっと誤解してきたことに気づきはじめた。そのお気楽な見た目の裏に、暗く複雑な内面が隠されていることを、グラント本人が真っ先に認めるはずだ。 「学生時代、ある先生がよく僕を呼び出して言うんだ。『本当のヒュー・グラントはどういう人間なんだい? つまり、我々が目にしているヒュー・グラントはどうも嘘っぽく見えるんだがね』って」 セントラルパークを歩きながらグラントはこう話す。彼は自身を(少なくとも、他人を説得できてしまう自身の能力を)、宗教ホラー映画『ヘレティック』(2024年11月全米公開、日本公開は未定)で自らが演じた雄弁な悪のカリスマ、リードになぞらえる。 「人を操り、誘惑したりする能力──これに関しては、僕も有罪かもしれないな」
似たようなキャラばかり演じたのは「僕も悪かった」
64歳になったグラントは、本人いわく、自身のキャリアにおける「フリークショー時代」を謳歌しているらしい。 悪のジェントルマンの趣もある、現実離れした犯罪者たち(『フレイザー家の秘密』など)、胡散臭いギャンクスター(『ジェントルメン』)、力に飢えたトリックスター(『ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り』)、自己欺瞞的な俳優(『パディントン2』など)、そしてもちろん『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』のうぬぼれた小人ウンパ・ルンパ。 かつては内気でモサモサ頭の優しげなイメージだった。しかし、それが真の自分であったことは一度もない、と本人は言う。 「僕の失敗は、『フォー・ウェディング』でいきなり大当たりしてしまって、あ、みんながこの役がそんなに好きなら、現実でもこういう人間になってみたらいいんじゃないか、と思ってしまったことだね。いかにも『どもり・まばたき君』みたいな感じでインタビューを受けていたわけだ。それでそういうキャラばかり押し付けられることになったんだから、これは僕が悪かったよな。最終的にはそのキャラも、まあ当然ながらみんなに嫌われたよ」 グラントはトロント映画祭で『ヘレティック』のプレミア上映を終えたばかりだ。インタビュー当日のニューヨークはかんかん照りだった。セントラルパークで待ち合わせたグラントは、古い友人のようにあたたかく筆者を迎えてくれた。