〈中国の一帯一路は死んでいない〉投資額減少も、デジタル経済で付加価値への「進化」
在メキシコのジャーナリストMie Hoejris DahlがForeign Policy誌(電子版)の論説‘The Belt and Road Isn’t Dead. It’s Evolving.’で、中国のラテンアメリカ・カリブ海諸国に対する一帯一路関連プロジェクトは、大規模なインフラ投資から通信、AIなどのより付加価値の高い新フロンティア部門優先に「進化」しつつあるとした上で、流入資金の減少という問題はあるが、付加価値の高いデジタル経済への移行につながる効果もある、と解説している。概要は以下のとおり。 習近平が2013年に開始した一帯一路構想(BRI)による大規模なインフラ投資は、双方に利益のある動きだった。中国は鉄鋼、労働力、その他の過剰生産能力を放出し、ラテンアメリカ・カリブ海(LAC)諸国に緊急に必要なインフラを提供することができた。17年以降、LAC(33カ国中)の22カ国が正式にBRIに加盟し、いまや中国はLAC諸国にとって、米国に次ぐ第2位の貿易相手国となった。 しかし、20年が経ち、北京は新たなアプローチをとりつつある。経済の減速、増大する債務負担、崩壊した不動産市場の管理に苦戦する中、北京はリスクとコストの高い巨大インフラ・プロジェクトの時代を終わらせ、クラウド・コンピューティング、5G、再生可能エネルギー、AI等の小規模で新しいフロンティア投資を優先している。 LAC諸国の指導者たちは、長年の深刻なインフラギャップにより、依然として外部からの投資を渇望しているが、この地域における中国投資、特にハード・インフラの拡大は、LAC諸国にとっても、欠陥のあるインフラや莫大な負債といった代償を伴うものとなっている。 20年以上に及ぶ大規模で野心的なインフラ整備プロジェクトを経て、中国は現実を直視し始めた。中国はまた、BRIの実施の不十分さを批判されて以降、インフラ・プロジェクトに対してますます慎重になっている。 今や中国は、通信、電気自動車、AIといった新フロンティアへの投資に重点を置いている。これにより、LAC諸国はデジタル・インフラを強化し、自動化や人工知能の導入を活用できるようになる。また、この地域が世界的なグリーン移行に参加しやすくなる可能性もある。 他方でLAC諸国の一部には、これら新しい分野でも中国に過度に依存して、自らの競争力が伸びないことを懸念する向きもある。中国による新たなフロンティアへの投資は、監視、サイバーセキュリティ、知的財産へのリスクなどを通じて、LAC諸国政府と国民に安全保障上の脅威をもたらす可能性があるが、この地域はそれらに対処する準備ができていない。 紛争が勃発した場合に、中国がパナマ運河やチャンカイ港などの主要な物流拠点へのアクセスと運営に関する知識を悪用して、アクセスを妨害したり攻撃を仕掛けたりする能力についても懸念がある。