「井上尚弥vs那須川天心」実現の可能性は? 最大の障壁は「所属ジムの事情」
「いやあ、天心君が勝ってくれてホッとしましたよ」 と語るのはさるボクシング界重鎮である。 【写真7枚】トリケラトプス拳のポーズで相手選手を挑発する「那須川天心」
キックボクシングの世紀の一戦というべき、那須川天心(23)と武尊(30)の対戦が6月19日、東京ドームで行われ、ダウンを奪った那須川が判定で勝利を収めた。 「42戦無敗を誇る天心君はこの一戦を最後にプロボクシングに転身します。期待の超大型新人ですが、やはり無敗と1敗とでは商品価値が全然違います」 最安1万5千円のチケットは早々に完売し、最低4400円の有料配信は国内格闘技史上最多の50万件を売り上げた。空前の集客力を誇る金の卵に斯界の期待は膨らむばかりだとか。 「武尊戦は58キロ契約でしたが、彼本来の適正体重は55キロで、スーパーバンタム級になる。でもそこは近々、井上尚弥が上がってくる階級なんです」
「わざわざ潰し合うようなことはしない」
尚弥vs天心――これまた夢のマッチではないか。 「いや、それはないですね」 なぜなのか。 「天心君はかねて、村田諒太ら精鋭を擁する帝拳ジムに通ってトレーニングを積んできましたから、帝拳入りするでしょう。一方、尚弥は大橋ジムですが、プロモートは帝拳の本田会長も深く関わっています。つまり二人とも陣営の大事なスターで、わざわざ潰し合うようなことはしません」 だが、同じスーパーバンタム級になる可能性は高い。そこでやっかいなことが。 「天賦の才に加え、準備も万端な天心君は、本来ならサクッと世界王者になりそうなものですが、尚弥はスーパーバンタム級でも4団体を統一し、史上初の“2階級4団体統一”を目指しているんです」 つまり二人で同じ階級のベルトを仲良く分け合って……とはいかないのだ。 「いわば、天心君の進む先に十字路があり、そこをまもなく“尚弥”というダンプカーが通り過ぎる状況。天心君はダンプが来る前に急いで渡るか、ダンプが通り過ぎるのを待つか……」
「週刊新潮」2022年6月30日号 掲載
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