スパイス控えめの穏やかな味わいが魅力。アフリカの肉じゃが、おすすめ3品
『日本の肉じゃが 世界の肉じゃが』(新星出版社)というインパクトのあるタイトルの新刊を書いたのは、生活史研究家としてたくさんの著書がある阿古真理さん。 【写真】モロッコ、エチオピア、南アフリカ共和国の肉じゃがはバラエティ豊か マニアが多いカレーやラーメン、パンなどに比べて、あまり語られてこなかった肉じゃがですが、その時代背景と、レシピを考案した料理家・料理人について詳細に記し、それぞれのレシピを写真入りで紹介しています。 たとえば、栗原はるみさんのレシピは、「焼き肉のたれの肉じゃが」。1992年のベストセラー『ごちそうさまがききたくて。』(文化出版局)からの出典です。焼き肉のタレをたっぷり使用しますが、意外に薄味で、しかも味が決まりやすいのだそうです。 本書には、1964年から2024年まで23人の料理家のレシピが載っていますが、そちらは本で読んでいただくとして、こちらでは「世界の肉じゃが」 から3回にわけて、その背景とレシピの一部を抜粋記事でお届けします。 第1回は「日本の国民的家庭料理の代表、肉じゃが。実はヨーロッパでも愛されていた!」をお届けしました。 第2回の今回はアフリカ編です。 第3回、アジア編と続きます。 世界の味をどうぞ試してみてください。
モロッコの肉じゃが
ジブラルタル海峡を挟んでスペインと向き合うモロッコ王国は、迷路のようなスーク(市場)がテレビでもよく紹介されてきました。 1912年から1956年までフランスの保護領だったこともあり、侵略の歴史も含めて西ヨーロッパとの結びつきが強い側があります。古くから交易が盛んで、ローマ帝国の支配を受けた時期もあり、さまざまな文化と交流した経験から、食文化は豊かです。 南部がサハラ砂漠に含まれるモロッコの気候は、非常に乾燥しているため水は貴重です。そんな環境から生まれたのが、2010年頃に日本でもブームになったタジン鍋。 円錐形またはドーム型の大きなふたがポイントの陶製の鍋で、熱せられた食材から出た水蒸気で料理を蒸し煮するので、水の量は少なくて済みます。日本では、油をあまり使わないヘルシーさ、調理法が手軽で時短になる点が魅力で人気になったのでしょう。珍しい鍋の形とデザインも、飾っているだけで楽しくなりそうです。 モロッコはイスラム教国でもあり、豚肉は食べません。 農業は盛んで、じゃがいもはもちろん、トマト、オリーブ、柑橘類、メロン、麦類などをつくっています。多様な文化が入り混じるモロッコから、鶏肉とじゃがいも、野菜などを重ねて蒸し煮する「鶏肉と野菜のタジン」をご紹介します。