「中山美穂さん」の命を奪った「冬の浴室」はどれだけ危険な場所なのか 専門家は「冬の海より危ない」「死者は年間6000人以上」
12月6日に自宅の浴室で死亡しているのが見つかった歌手の中山美穂さん(享年 54)。所属事務所はその死因について《検死の結果、事件性はないことが確認されました。/また、死因は入浴中に起きた不慮の事故によるものと判明いたしました》と発表した。 【実際の写真】「本当に突然だったんだ…」最高の笑顔を見せる“つい最近”の中山美穂 ***
彼女は水が張られた浴槽内で前かがみの状態で見つかったという。一体、何が起こったのだろう。日本内科学会認定の総合内科専門医で秋津医院院長の秋津壽男氏 に聞いた。 「実際に見たわけではありませんから病名まで特定することはできませんが、基礎疾患などはなかったと聞きますし、この季節、一般的に考えられるのは、居眠りで溺れてしまったかヒートショックでしょうね」 入浴中の居眠りは自分で気をつけるほかないだろう。 「ご家族がいれば助けに来てもらうことが一番大事です。お風呂に入る前に家族に一声かけておくことで、遅いなと思われたら助けてもらうこともできますから。独り暮らしは仕方ありませんが……。深酒のあとのお風呂は危険ですので我慢したほうがいいですね」 一方、この時期に危険性が呼びかけられるのがヒートショックだ。厚生労働省が発表する「人口動態統計」によると、2023年に家や居住施設内の浴槽で水死した65歳以上の高齢者は6073人。同年の全国の交通事故死者は2678人だったから、実に2・3倍に上る。交通事故死よりも多いとは……。
厚労省の発表よりもさらに多い
「実は、実際にヒートショックで亡くなる方は、厚労省が発表する数字より多いのでははないかと考えられています。というのも、浴槽で亡くなった場合、当然ながら衣服は着けていません。例えば、妻を発見した夫はそのままでは忍びないと、救急車が到着する前に遺体を寝室などに移動し、服を着せていることがあります。こうした場合、死因がヒートショック以外の病死とされることがあるため、浴室での死亡にカウントされないことがあるわけです」 ヒートショックによる死亡数は、実際はさらに多いというわけだ。 「それと、ヒートショックという呼び名も誤解を招く恐れがあります。実際は“温度差ショック”と呼んだほうがいいと考えます」 どういうことだろうか。 「特に冬の時期は、暖かい居間と寒い浴室、熱い湯船と温度差が激しいため、体が順応しきれなくなるのです。具体的には、暖かい部屋から脱衣所に移動した際、寒さに対応するために血管が収縮し、血圧が上昇。服を脱いで冷たい浴室に入るとさらに血圧は上昇します。そして湯船に入ると、血管が弛緩して血圧が下降するという流れです。血圧が上昇した時には虚血性心疾患(心筋梗塞)や脳出血などが起こり得ますし、血圧が下がった時には脳梗塞の危険性が高まります」 寒暖差によって引き起こされる病の総称であるから“温度差ショック”と言うわけだ。さらに……。