伸銅品の21年度輸入量、コロナ禍前上回る。需給ひっ迫で海外材急増
自動車や半導体関連などの高需要が続く国内伸銅品市場で、海外材の存在感が強まっている。財務省貿易統計によると、2021年度の伸銅品輸入量はほとんどの品種で、コロナ前の19年度を上回っている。条製品を中心に国内の需給がタイト化し、海外メーカーが供給不足分を補っている格好だ。これを商機と見出した一部海外メーカーは拡販に注力。今後需要が一段落した際、国内企業のシェア縮小が懸念される。 国内の伸銅品市場は20年春から夏にかけ、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で需要が大幅に落ち込んだ。その後は自動車の挽回生産、通信機器やデジタル家電の巣ごもり需要などにより徐々に需要が回復。条製品は同年夏から国内メーカーがフル生産となり、銅管や黄銅棒メーカーもその後順次稼働率が100%に達した。 国内需要が供給能力を上回るようになったことで、国内メーカーの多くで納期遅延が発生。不足分を海外材で補う動きが出始めたことで、輸入量が増加傾向となっている。 特に需給がひっ迫していた条製品は19年度比で2~4割増加。中国メーカーは「昨年下期から引き合いが強まっている。今年は昨年の3倍まで販売が広がるのでは」と話す。一方、これまで中国材は価格競争力を武器としていたが、「現在は中国の人件費が上がり、国内材との値差はほとんどない。顧客からは低価格での取引を提示されるが、こちらも品質に自信があり、低い価格では契約しない」(中国メーカー)という。 条製品の輸入量増加はまだ伸び代がありそうだ。中国メーカーは「現在、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で中国国内で船が止まり、商談が途切れることが多々ある」とし、まだ本調子ではないと説明。国内条製品の需給は依然ひっ迫しており、輸入材の引き合いも引き続き強いため、「国内メーカーによる供給が特に手薄な汎用材を中心に販路を広げていきたい」(中国メーカー)と意欲的だ。 黄銅棒は19年度比で1割増と、その他伸銅品に比べ伸び率が高くない。国内メーカーの価格競争力が高く、需給のタイト感も条製品に比べ強くないため、海外材が入り込む余地が少ない。 銅管はもともと輸入材の比率が高く、伸銅品の中で最も輸入量が大きい。平滑管が頭打ちとなっている一方、エアコンの熱交換器用部材などに使われる内面溝付き管が19年度比で6倍と、増加し続けている。国内の銅管大手幹部は「国内供給が不足する中で輸入材が増えた格好で、今のところ国内材と良い住み分けができている。ただ、需要が一段落した際は、顧客がどちらを選ぶか」と懸念を示す。