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ラッコが消えれば海が死ぬ――たった一種の絶滅が招く生態系の崩壊

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現代ビジネス

---------- 「六番目の大量絶滅」、「生命史上最悪の絶滅規模」、「100万種の絶滅危惧種」……多くの生物学者が、生物多様性の喪失の深刻さを強く訴える言葉を使っています。いずれも、現在の地球で起きている現象を言い表すものです。私たち人間の活動が未曾有の大量絶滅を引き起こしていることが明らかになっています。 上に示したような強い言葉を見聞きし、「生物多様性の喪失は、めぐりめぐって人類に悪影響を与えるのではないだろうか?」という不安にかられている人もいるかもしれません。この疑問に対して、『〈正義〉の生物学』を上梓した山田俊弘氏に“生態系サービス“の観点から解説していただきました。 ----------

生態系・生態系機能・生態系サービス

 地球上のどんな生物も単独で生きているわけではありません。ほかの生物と互いに影響を及ぼし合いながら生きています。それだけではありません。生物を取り巻く非生物環境(光や水、酸素、二酸化炭素、栄養塩など)とも、密接なつながりをもっています。  地球上の多様な生物とそれを取り巻く非生物環境はシステムを形成しているとみなすことができます。システムとは“系”ともいい、構成要素がお互いに影響を与え合えあうことで、全体が成り立っているものを指します。そして、生物と非生物環境からなるシステムが“生態系”です(図1)。  地球(全体)をひとつの生態系とみなすことができます。また、もっと狭い範囲――たとえば森や湖、あるいはヒトの腸の中――を独立した生態系とみなすこともあります。  生態系での多様な生物とそれを取り巻く非生物環境のつながりを、光合成を中心に見てみましょう。生態系内の植物は非生物環境である光や水、二酸化炭素を用いて光合成により有機物と酸素をつくります(これを“物質生産”と呼びます)。こうしたつながりを生態系の働きとして捉えることもでき、その働きを“生態系機能”と呼んでいます。生態系機能として捉えなおせば、光合成には物質生産機能、二酸化炭素吸収機能、酸素供給機能があるというわけです。  生態系機能は、ヒトの目には“恩恵”に映ります。たとえば、ヒトが利用する食料や衣類、建材、医療品等のほとんどは、生態系の物質生産に支えられています。あるいは、生態系による二酸化炭素の吸収は、地球温暖化の緩和につながります。生態系(自然)があるだけで、ヒトは様々な恩恵を受けているというわけです。  ヒトが生態系から受けているこうした恩恵を“生態系サービス”と呼びます。一般的には、“自然の恵み”とか“生き物の恵み”などと言われるものです。生態系サービスはヒトの生活を支える基盤であるため、そのサービスの低下や喪失はわれわれの生活を脅すことになります。  生態系サービスにおいては、一見とるに足らない生物が重要な役割を果たしていることがあります。たとえば昆虫です。  昆虫は微生物とともに、動植物の遺体などの有機物を無機物へ分解する働きをもちます。そして、分解により生成された無機物は、再び植物に吸収され、物質生産に利用されます。つまり、昆虫などによる有機物の分解が生態系の物質生産を支えているのです。  アメリカの生物学者エドワード・ウィルソンは、もし昆虫が地球からいなくなれば、生態系内での有機物の分解が滞り、ほどなくして物質生産が停止し、その結果、ヒトは数ヵ月ももたずに絶滅するだろう、と述べています。

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