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米国防権限法案が辺野古「不安」に触れる 玉城知事・屋良衆院議員が米国でロビー活動

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辺野古断念へ一縷の道拓く、普天間返還にも「作戦」

 玉城デニー沖縄県知事と、盟友の屋良朝博衆議院議員(国民民主)が放つボディブローがじわじわと効いている。  受けて立つ安倍晋三首相が、突然、膝をついてダウン。というような光景が展開される可能性が出てきた。  防衛省が沖縄県名護市で進める辺野古新基地の建設工事をめぐる沖縄県と政府の攻防が、新しいラウンドに入ったのだ。先週、沖縄タイムスと琉球新報は、米下院軍事委員会の即応力小委員会(ジョン・ガラメンディ委員長)が埋め立て予定地である大浦湾の軟弱地盤への懸念を盛り込んだ国防権限法案を可決した、と報じた。  同法案は「大浦湾の海底での地震の可能性および不安定性に対する懸念が高まってきた」「2本の活断層と50メートルの深海が建設予定地の近くに存在することに注意を促したい」と指摘。12月1日までに地盤の堅さを示す「N値」の検証結果や地盤強化を含む対処法、環境全体への影響など5点を盛り込んだ報告書を小委員会に提出するよう国防長官に義務付けた。  国防権限法は、世界一の軍事大国=米国の国防予算の使いみちを定める法律で、毎会計年度ごとに策定される。法案は上下両院の軍事委員会で可決された後、上下両院の本会議を経て一本化。大統領が署名して成立する。  かたや上院の国防権限法案は辺野古基地建設に触れていない。すり合わせが必要で、道のりは長いが、ともかく辺野古の軟弱地盤の問題が法案で取り上げられたのは初めてだ。  これまで複数の地質学者が活断層の存在を断言してきた。  軟弱地盤の改良工事には7万1000本の杭を打ち込まねばならず、しかも海面下90メートルまで「マヨネーズ並み」の軟弱地盤が続いているにもかかわらず、国内の作業船は70メートルまでしか工事ができない。防衛省は設計変更で地盤改良が追加されたことで、事業費を当初の3倍ちかい9300億円、工期は12年と見積もった。それでも見込みが立ったとはいえず、沖縄県の試算では工事費2兆5000億円、工期は13年となっている。  こうした実態がようやく米国の議員に伝わり、こんな場所に軍事施設を造って大丈夫なのか、海兵隊を駐留させた後に損害を被るのは米国ではないか、と国防総省に懸念が突きつけられたのである。米国議員の認識を深めさせたのは玉城デニー知事の何度はね返されても頭を下げて相手のボディを打つボクサーのような訪米対話活動だった。  玉城知事は、2018年の知事就任以来、3度米国に渡っている。初回は18年10月、知事就任直後の「顔見せ挨拶」的な要素もなくはなかった。2度目は、昨年の10月。その訪米前、玉城知事は私のインタビューにこう答えた。  「沖縄県民投票では7割以上の県民が辺野古新基地建設に反対の民意を示しました。私は日米同盟の大切さは理解しています。米軍基地を全部なくせとは言っていません。日米同盟はとても重要です。ただ、こんなに不合理で、先行きの見通しも立たない、理屈に合わない辺野古の新基地建設はいりません。日米、どちらのためにもならない。政府はすぐに工事を止めるべきです。しっかり、米国の方々に説明したい」  渡米した玉城知事は、国防権限法案に照準を定めて動いた。昨年、上院が可決した法案には「在沖海兵隊のグアム、ハワイなどへの分散移転計画の見直し」を義務づける条項が盛り込まれていた。玉城知事は、その見直しの対象に辺野古新基地建設を含めるよう議員に直訴する。米議会は大統領弾劾やメキシコ国境の壁建設などで審議日程が乱れていたが、10人の議員が会ってくれた。  そのなかには、米政府の軍事予算を左右する軍事委員会に属する議員が4人もいた。彼らは「ちょっと遅すぎた。このタイミングでは難しい」と反応し、見直しの確約は取れなかった。が、軍事委員会のメンバーの目を辺野古に向けさせた意味は小さくなかった。玉城知事は「絶対にあきらめない」と不退転の意志を固める。  3度目の渡米は、今年の2月17、18日。沖縄県内で初めて新型コロナウイルス感染者が確認された直後だった。玉城知事は、国防権限法案を協議する米議員に辺野古新基地建設を進めれば「米国側の負担が大きくなる」とストレートに伝える。議員たちは「調査」に意欲を示し、無謀な計画への関心を高める。そこから今回の法案の「懸念」や国防総省への報告書の要求につながったのだった。  一連の玉城知事の訪米対話活動は、屋良衆議院議員がサポートしている。ふたりのつき合いは、2002年に玉城氏が沖縄市長選に出馬する前後、屋良氏が沖縄タイムス記者として取材をしたころから続いている。安全保障や米軍の活動に精通している屋良氏は玉城知事の大切なブレーンの一人といえる。  屋良氏は、今年1月中旬、玉城知事が渡米する1か月前に「沖縄等米軍基地問題議員懇談会(近藤昭一会長)」のメンバーとして米国を訪問。秋の米大統領選を見越して民主党の議員連盟にアプローチした。大統領選でトランプ大統領が再選されず、政権交代した場合にスムーズに呼応できる環境づくりが目的だった。  屋良氏は、訪米直前に沖縄タイムス1月13日付インタビューで狙いを訊かれ、「国防権限法に働きかけるためだ」と断言している。さらに辺野古新基地建設の発端である米軍普天間飛行場の移設問題については、こう語っていた。  「私案だが、まず普天間を即時閉鎖させるための対応をとる。普天間第二小はシェルターがある異常な状況で、何もやらないわけにはいかない。普天間の機能で残っているのはオスプレイやヘリの運用だ。沖縄にいる地上戦闘部隊との連携訓練は、米専門家は5~6機あればできると言っている。5~6機だけ残し、(本土受け入れも含めて)ローテーションすれば負担は軽くなる」  では、玉城氏、屋良氏の攻勢を受けて立つ防衛省はどうか。  おそらく米国防総省は、義務づけられた報告書を作成するために防衛省に問い合わせるだろう。現時点で防衛省は軟弱地盤の再調査を拒絶している。日本政府はゴリゴリと巻き返すに違いない。  過去の国防権限法案の策定過程では、2度沖縄関連の記述が入ったが、いずれも上下両院協議の末、最終案から削除されている。  とはいえ、安倍首相が頼みとする河野太郎防衛相は「コストと期間」を理由にイージス・アショアの配備計画を撤回した。潮目は変わりつつある。辺野古新基地建設のコストと期間は、イージス・アショアに輪をかけてあいまいだ。沖縄と政府の攻防は続く。 ■山岡淳一郎(作家) 1959年愛媛県生まれ。作家。「人と時代」「21世紀の公と私」をテーマに近現代史、政治、経済、医療など旺盛に執筆。時事番組の司会、コメンテーターも務める。著書は、『後藤新平 日本の羅針盤となった男』『田中角栄の資源戦争』(草思社)、『気骨 経営者 土光敏夫の闘い』(平凡社)、『逆境を越えて 宅急便の父 小倉昌男伝』(KADOKAWA)、『原発と権力』『長生きしても報われない社会 在宅医療・介護の真実』(ちくま新書)、『勝海舟 歴史を動かす交渉力』(草思社)、『木下サーカス四代記』(東洋経済新報社)、『生きのびるマンション <二つの老い>をこえて』(岩波新書)。2020年1月に『ゴッドドクター 徳田虎雄』(小学館文庫)刊行。

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