コロナ禍で見直された「モノが作れる力」。マスクが買えなくなった時、手芸が教えてくれたこと
手芸をするとモノが作れる━━。 あまりに当然のことだが、多くの人はその大事さをわかっていなかったと語る、LIFE KNIT 代表の横山起也さん。 手芸が持つ「解決の難しい問題と共生しながら元気に生きていける力」について、ハフポスト日本版に寄稿しました。 【文:横山起也 編集:毛谷村真木/ハフポスト日本版】 --------- こんなタイトルがついているけれど、これからする話は「手芸」の話ではない。 これからの私たちにはどんな「力」が必要なのだろうか、という話である。
コロナ禍で見直された手芸
もしかしたら、あなたが小さい頃、お母さんやおばあちゃんが家でミシンを動かしたり、手編みのマフラーを編んだりする「手芸」をしていたかもしれない。 私はその「手芸」の関連企業に顧問としてアドバイスをする仕事をしたり、ワークショップで編み物の楽しさを伝えたりする活動をしている。 そんな私がとある変化を肌で感じはじめたのは今年に入ってからである。 コロナ禍に入ってから手芸が見直されているのだ。 SNSを見ていると、昔やっていた手芸を再開する人や新たにやり始めた人もずいぶんと目につくし、ネットのアンケートでもそのような結果が出ている。 業界側も、たとえばミシンなどは生産が追いつかなくなるほど売れたとのことで、それも昨今聞かなかった話である。 発端はマスクの品不足だった。 今まで使い捨てることを省みもしなかったマスクが店頭から消えた時、多くの人が途方に暮れた。行列の末、ドラッグストアの店員さんを怒鳴る人もいた。 その時、手芸をやっている人たちは冷静だった。買えないとわかるや否や、布を縫い合わせたり編んだりしてマスクを作ってしまったのだ。 手芸をするとモノが作れる。 それはあまりに当然のことだったが、多くの人はその大事さをわかっていなかった。 どれだけ近代化が進みモノが普及しようと、感染症や災害などを前にすれば、実は「モノが買えない」状況と隣り合わせだということを認識できていなかった。「マスクを買えないなら作ればいいのだ」と考えられなかったからこそドラッグストアで怒号が鳴り響いたのである。 この「ものが作れる」というのはコロナ渦中で見直された一番わかりやすい「手芸の力」である。 とても重要な力だ。 しかし他にも「手芸の力」はある。