ガソリン税の上に“消費税”がかかる「Tax on Tax(二重課税)」…35年間「正当化」されてきた“法的根拠”とは【税理士解説】
一貫性を欠く国の「消費税の法的性質」のとらえ方
消費税のインボイス制度は、年間売上高1000万円以下の中小・零細の「免税事業者」に対して酷な制度との指摘がなされてきた。 すなわち、制度上、インボイスを発行できるのは課税事業者に限られる。したがって、免税事業者の相手方は、消費税の納税のときに、免税事業者に支払った消費税の額を納税額から控除できなくなり、免税事業者との取引を避けるようになるとの指摘である。 そうであるにもかかわらず、政府・与党は2023年10月にインボイス制度の施行に踏み切った。その主な理由が、「消費税は『預かり金的な性格を有する』」というものだった。 すなわち、一般消費者が物・サービスを購入する際に消費税を負担し、それを販売業者が預かり、最終的に納税する、という仕組みを想定している。 しかし、実際には、黒瀧税理士が指摘したように、消費税法の仕組み上は、「消費税相当額」を価格に上乗せするかどうかは、納税者である販売業者が自己責任で決めることになっている。そして従来、免税事業者は、消費税納税義務がないことを前提に物・サービスの価格を決めていた(事実上、消費税相当額を上乗せしない額に設定していた)という実態がある。 ガソリン税と消費税の「Tax on Tax」を維持する根拠を消費税法の仕組み(消費税は「預かり金」ではなく価格決定の参考にすぎない)に求めておきながら、他方でインボイス制度を正当化する根拠を消費税の「預り金的性格」に求めるとしたら、国の姿勢は一貫性を欠くといわざるを得ないだろう。 わが国では、税金に関する事項は国民代表機関である国会が定め、コントロールしなければならないという「租税法律主義」(憲法84条)が採用されている。もちろん、その中には、課税要件が法律で定められることのみならず、その内容・根拠が明確であることが要求される。 今後、「与野党の間」および「国会と政府の間」で、税制について活発なやりとりが行われることが想定される。ガソリン税の「トリガー条項」や「Tax on Tax」の問題が審議されるにあたり、今後、消費税の法的性格や、インボイス制度(野党の多くが「廃止」を主張している)との論理的整合性が問われることは間違いないだろう。
弁護士JP編集部