現役では8組目の兄弟騎手・角田大和が好調の要因や弟の存在を語る【競馬の話をしよう。】
競馬の世界を掘り下げる企画「競馬の話をしよう。」。G1レースのない今週は、現役兄弟騎手を特集。現役では8組目となる角田兄弟の兄・大和騎手(20)=栗東・角田=を直撃した。3月に鮮烈なデビューを飾った弟・大河騎手(18)=栗東・石橋=の陰に隠れているが、デビュー2年目の兄もここまで9勝と好調。単勝回収率103%と穴党からは目が離せない存在になってきている兄に、好調の要因や弟のデビュー、さらには今後の目標などについて語ってもらった。(聞き手・関俊彦) ―先週土曜(16日)は福島でデビュー以来、初の連勝。自身2連勝となった8R(カフジアスール)ではゴール後にガッツポーズも 角田和「カフジアスールは初勝利の馬ですからね。騎乗したほとんどの馬を覚えていますが、やっぱり初勝利の馬は特に印象に残っています。なかなか乗る機会がなかったんですが、1年ぶりにコンビを組んで勝てたのでうれしかったです」 ―2年目の今年はここまで9勝と昨年の20勝を上回る勢い。好調の要因は 「好調とは全然思ってないです。勝てる力がある馬に乗せてもらっているのに、自分に何かが足りなくてあと一歩のレース(2着10回、3着11回)が多いですから。特に(1~2月の)小倉では、その思いが強くて、リベンジしたいという思いの方が強いです」 ―1年目を振り返って 「全然、納得はいってないです。デビューしてから初勝利に1カ月近くかかりましたし、その後も良い馬にたくさん乗せていただいたんですが…。掲示板にはくるんですが、1着がなかなか取れなくて競馬が終わるたびに、もっとああしたら良かったと思うことも多かったです」 ―1年間で感じたことは 「一流ジョッキーは考えて勝つべくして勝っていると思いました。自分はまだ、たまたま勝てているだけ。そのたまたまをたまたまじゃなくしていかないといけない。勝てれば良いと言われたらそれまでなんですが、馬乗りにはいろんな正解がある中で自分はまだそれが見つけられていない。父親(晃一・現調教師)がどれだけすごいことをやってきたのかは、デビューして1週間で分かりました」 ―競馬場でもトレセンでも先輩騎手に積極的に話を聞く姿勢が目立つ 「自分の良い部分でもあり、悪い部分でもあると思っています。人によってはなれなれしいと思う人も当然いますからね。でもいろんなジョッキーに話を聞くことで、自分の引き出しが増えていることも感じます。例えば、典さん(横山典弘騎手)がどういう考えでポツンをしているのかは直接聞かないと分からないこと。馬のことを考え、時には思い切った判断をすることも大切だと思いました」 ―昨年はローカル参戦をほとんどしなかった 「自分の中で一流ジョッキーに囲まれて勉強したいと思って、意識的にそうしていました。もちろんローカルだから勝てるというわけではありませんが、目先の一勝よりも一流ジョッキーの状況判断であったり、プレッシャーのかけ方であったりを肌で感じたかったのが大きな理由です」 ―今年は弟・大河もデビューした。刺激は 「もちろんありますよ。弟は目立つデビュー(デビューから2連勝)もしましたから、いろんな人から弟がデビューしてから火がついたなとか、やばいんじゃないか、と言われたりもしました。そんな中、唯一違ったのが(岩田)康誠さんでした。『お前はお前なんやから自分のペースで頑張れ』と言ってくれて。康誠さんは結果が出ない時も『着には来とるんやからもうひと工夫したらポンポンと勝てる』と言葉を掛けてくれたりもしました。もちろんダメだったレースでは厳しい言葉もありますが、一流のジョッキーが見てくれていると感じるのはとても励みになります」 ―今後の目標は 「今年の桜花賞を見て、トップジョッキーは自分とはレベルの違う競馬をしていると改めて思いました。ただ、G1で活躍するという最終目標をかなえるためには、ああいう中でやれないといけない。康誠さんが言う『ひと工夫』はまだ見つけられていません。でも今後は勝っちゃったではなく、自分でレースをつくり、自信を持って勝ったと言えるレースを増やしていきたいと思っています」 【関連ニュース】 今週も福島に参戦する角田和の土曜の注目は1Rのゴッドクインビーだ。デビューから2戦は芝で5着、7着だったが、いずれも着差はわずか。今回は初ダートで「走り的にずっとダートを使ってみたいと思っていましたし、楽しみです。前々で運びたいですね」と積極策での好走を狙う。 日曜も福島で9鞍に騎乗。1Rのヒロシゲアトムは初出走だが「追い切りでは未勝利戦で好走している馬に楽に先着していますからね。前々でつつかれる形が良さそうです」と既走馬相手でも色気十分。2Rのメモリーサボアールは「神経質なところはありますが良い馬です。初戦が1400メートルだったので、距離が延びても良い位置につけられると思います」と先行策をイメージしている。 また、9Rのグランアプロウソは、骨折明けで10カ月ぶりだが「キャンターから良い馬と思った馬。骨折明けがどうかですが、追い切りの反応は良かったです。(武)豊さんも走ると言っていますからね」と期待十分だった。 【関連ニュース2】 初騎乗から2連勝とど派手なデビューを果たした角田河。兄・大和についてはデビュー前から「競馬のことをいろいろ教えてもらっている。でも、兄貴を追い越すつもりでいきたい」と感謝しつつもライバル心はメラメラ。ここまでは新人トップの5勝。「僕の方がお父さんに性格は似ていると言われています」と語る勝負師の2世は、兄とともに競馬界を盛り上げていくつもりだ。 ▼角田大和(つのだ・やまと) 2001年9月3日生まれ、滋賀県大津市出身の20歳。中学卒業後、競馬学校に入学し、2021年3月に角田厩舎からデビュー。初騎乗はエコロキングで4着。3月27日の中京5Rをカフジアスールで勝ち、初勝利を挙げた。7月4日のCBC賞ではプリカジュールで重賞初騎乗(13着)。師匠であり、父の角田晃一師は騎手としてG110勝を挙げた名手。騎手を志したきっかけは、ジャングルポケットが制した日本ダービー(01年)など父の活躍を映像で見たこと。 ▼角田大河(つのだ・たいが) 2003年5月21日生まれ、滋賀県大津市出身の18歳。22年3月に石橋厩舎からデビュー。デビュー戦だった3月5日の阪神1Rをメイショウソウゲツで勝って初騎乗初勝利。続く阪神2Rもメイショウトールで勝ち、1996年の福永祐一以来、26年ぶりとなるデビュー2連勝を飾った。
中日スポーツ