なぜ「IPPON女子グランプリ」でタレント勢が強かったのか 女性芸人を萎縮させた「番組の構造」
「果たして女性は大喜利が苦手なのか?」。そんなナレーションで始まった「IPPON女子グランプリ」だが、ハリセンボン・箕輪はるかさんが堂々たる戦いぶりを見せて初代女王に。もともと大喜利では同業者からも評価の高い実力者ではあったが、改めて全国区にその名を轟かせた格好だ。一方でタレント回に比べて芸人回には物足りなさを覚えたという声も少なくない。 【写真6枚】滝沢カレン、神田愛花…なぜ「非芸人」が活躍できた?
確かに放送後のSNSやネットニュースでも、NMB48渋谷凪咲さんや神田愛花さんなど、女性タレントの回答ばかりが話題になっていた。対する芸人側のメンツは、蛙亭・イワクラさんやAマッソ・加納さん、3時のヒロイン・福田麻貴さんといった顔ぶれ。福田さんは2019年の「THE W」の覇者であり、加納さんも昨年2位。ラランド・サーヤさんを含めた三人で、「トゲアリトゲナシトゲトゲ」のMCを回し、さまざまなお笑い企画に挑んでいる。イワクラさんも「ダイナマイト関西」や「有吉の壁」などで鳴らした大喜利力には定評があり、いわば女性芸人の最高峰クラスの面々だ。それぞれが「IPPONグランプリ」出場者たち同様にコンビのネタ作り担当であり、独自の世界観を作る力を疑う余地はない。 それでも通常版の「IPPONグランプリ」と並べて見ると、消化不良に見えた。タレント枠に比べて明らかに緊張の色が濃かったが、0点回答が多かったのも意外だった。でもそれは彼女たちが大喜利を苦手としているというよりも、番組の構造に絡め取られた部分も大きいのではないだろうか。
敗因は空気の読みすぎ? プレッシャーを生んだ通常版「IPPONグランプリ」との違い
タレント回を見て改めて感じたが、大喜利は回答そのものより、その場の空気や流れをいかに作るかが大きい。声の大きさやタメの作り方、フリップ芸にリアクション。はるかさんは突出してうまかったし、渋谷さんや滝沢カレンさんもお見事だった。共通しているのは、空気は読まないという姿勢ではないだろうか。 空気は作るもので、読んだら負け。結果的にタレント枠が爽快だったのは、天然ボケキャラばかりの爆発力というより、みな変な計算や遠慮をせずひたすら勝ちに行くまっすぐさを持った人たちだったからだろう。 でも今回は、芸人チームは空気を読みすぎて足踏みした印象がある。特に通常版と違うシステムが、その傾向を加速させていたように思う。 一つは採点システムだ。通常版では2チームに分かれ、出場していない側のメンバーが点を入れる。しかし今回はチェアマンの松ちゃんを含め、バカリズムさん、麒麟・川島明さん、千鳥・大悟さんという過去の優勝者による評点だ。お笑い強者の大先輩たちによる評価は、単なる大喜利の点数というより芸人としての点数をつけられるような怖さもあったのではないか。採点基準も明確でないため、男性受けする回答を手探りしている場面も見受けられた。