“癒やし系”ドラマ激増!コロナ禍も影響 高畑充希、菅野美穂・浜辺美波らが命や絆の尊さ伝える
テレビドラマの現場に新たなトレンドが起きている。2021年1月期連続ドラマを見渡すと、“癒やし”や“家族の再生”、“心のつながりの大切さ”をテーマに据えた作品がずらり。さらに、福田靖や宮藤官九郎、橋部敦子、北川悦吏子といった人気脚本家がこぞって家族や親子、夫婦の絆を描くドラマを手掛けるなど、人と人とのつながりを意識した作品が目立つ。新型コロナウイルス禍の収束が見えない今、視聴者に癒やしや安らぎ、前向きな気持ちを得てもらえたら…そんな制作側の思いがにじむ。 【写真を見る】菅野美穂&浜辺美波はキュートな“美人母娘”に♪ 2人の固い絆が描かれる ■「にじいろカルテ」など“癒やし系”ドラマが多数 2021年1月期の地上波連ドラのうち、制作意図に“癒やし”や“再生”といったキーワードを打ち出したヒューマン系作品は、日本テレビ系の「江戸モアゼル~令和で恋、いたしんす。~」、テレビ朝日系の「にじいろカルテ」と「モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~」、テレビ東京系の「おじさまと猫」の4本。通常の連ドラより話数が少ない、NHK総合「6畳間のピアノマン」や、テレビ東京系のドラマスペシャル「神様のカルテ」も、“人の結びつき”や“心のつながりの大切さ”、“命の尊さ”を描く。 そのほか、福田靖が手掛ける「書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~」、宮藤官九郎脚本の「俺の家の話」、北川悦吏子による「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」、橋部敦子の「知ってるワイフ」など“家族の絆”にスポットを当てた作品も多い。 参考までに、2020年1月期に地上波で放送された全5話以上の連ドラ作品のうち“癒やし”や“人と人との絆”などをテーマに据えた作品は「アライブ がん専門医のカルテ」(フジテレビ系)と「病室で念仏を唱えないでください」(TBS系)の2作品のみ。(※2020年1月期ザテレビジョン「ドラマアカデミー賞」にノミネートされた連ドラ32作品より、それぞれの番組概要から抽出) 5話未満の「心の傷を癒すということ」(NHK総合)を含めても、3作品にとどまる。このことからも、今期は“癒やし系ドラマ”がいかに多いかがわかる。 ■背景に“こんな時代だからこそ” 背景にあるのはやはり、“こんな時代だからこそ”という思いだ。 「モコミ―」(1/23スタート、毎週土曜夜11:00-11:30、テレビ朝日系)は「おっさんずラブ」シリーズや「M 愛すべき人がいて」(2020年)などの“土曜ナイトドラマ枠”で初めて制作されるヒューマンホームドラマ。ヌイグルミや石、植物などの気持ちがわかってしまう“感覚”を持つがゆえに他人とのかかわりを避けてきたヒロイン・萌子美(小芝風花)が広い世界に踏み出していく、再生と成長の物語だ。 番組概要には「2020年、世界は大きな困難に見舞われ、親しい間柄でも“ソーシャルディスタンス”が求められています。それが“心の距離”さえも遠ざけるような事態を招き、はがゆく思うことも。これまでと“日常”が大きく変わり、さまざまな不安を抱えて生きる人が多いこんな時代だからこそ、この作品では誰にとっても身近な存在である家族の大切さを、圧倒的な優しさとともに真摯に描きます」の言葉が綴られる。 「6畳間のピアノマン」(2/6スタート、毎週土曜夜9:00-9:50、NHK総合)は、この世を去ってしまった一人の青年が遺した名曲「ピアノ・マン」の歌唱動画が周囲の人々の心に灯をともしていく、心温まる物語。番組公式サイトには「新型コロナウイルスの影響でライフスタイルが大きく変わってしまった今。孤独や不安に立ち止まった背中を、誰かが優しく押してくれる瞬間があるとしたら…」と綴られ、内田ゆきチーフ・プロデューサーは「けっしてひとりぼっちではない、という思いを新たにしていただければ」と本作に込めた思いを語る。 ■「1週間の癒やしになれば」 ドラマ「姉ちゃんの恋人」(フジテレビ系)でハートフルな物語を紡いだ脚本家・岡田惠和は今期、高畑充希主演のドラマ「にじいろカルテ」(1/21スタート、毎週木曜夜9:00-9:54※初回は拡大スペシャル、テレビ朝日系)を手掛ける。 “医者だから”って、人のために何でもできる聖人君子なわけじゃない。感情もある、普通の人間。そんな“人なみの弱さ”を抱えた医師たちが、悩みながらもそれぞれの生き方を見つけていく物語。 医療ドラマの“王道”とは一線を画したストーリーで、手術や治療がゴールではなく“病と共に生きる”姿を通じ、命・人生との向き合い方を描く。 主演の高畑充希は「今はしんどいニュースが多く、暗い気持ちになってしまうこともあると思いますが、そんな中で、この作品は温かい気持ちになれたり、『明日も頑張るか!』という気持ちになれるドラマだと感じているので、見ていただく方の1週間の癒やしになればいいなと思っています」と作品に込められた思いを代弁する。 「にじいろカルテ」の制作現場からも、癒やしオーラ漂うコメントが届いている。岡田氏は「見てくださる方々の心が少しだけ温まるような、こたつ布団のようなドラマになれば」、貴島彩理プロデューサーも「見た後に、大切な誰かに『いいんだよ』と言ってあげたくなるような、優しいドラマがお届けできればと思います」と話す。 なお、岡田氏は1月4日に放送された石原さとみ主演新春ドラマスペシャル「人生最高の贈りもの」も手掛けている。こちらは、命の期限を抱えたヒロイン・ゆり子(石原)が父・亮介(寺尾聰)と2人きりで過ごす数日間の物語。石原の「この作品に込められた穏やかさとか温かさとか優しさとか…日常の尊さみたいなものが伝わって、見てくださっている方々の生活が少しでも温かくなったらいいなと思います」のメッセージからも、作品の温かみが伝わってくる。 ■おじさん×猫の“究極の純愛”に癒やされる “疲れた現代女性の心を癒やす”をキャッチフレーズに据えるのが「江戸モアゼル~令和で恋、いたしんす。~」(1/7[木]スタート、毎週木曜夜11:59-0:54、日本テレビ系)。岡田結実演じる花魁・仙夏が江戸時代からタイムスリップし、独特の視点で悩める令和の女性たちの背中をそっと押していく。 “おじさん+猫”の組み合わせで人々に癒やしを届けるのはドラマParvi「おじさまと猫」(1/6[水]スタート、毎週水曜夜0:58-1:28、テレビ東京ほか)。愛されることをあきらめていた猫と草刈正雄演じる孤独な“おじさま”が出会い、互いに想い合う姿を描く。濱谷晃一プロデューサーは「これは、現代のシンデレラストーリーだと思っています。おじさまと猫の“究極の純愛”に、ぜひ癒やされて頂けたら幸いです」と見どころを語る。 そしてテレビ東京はドラマスペシャル「神様のカルテ」(初回2/15[月]夜8:00放送、テレビ東京系)を放送する。いわゆる連ドラではないが、2時間×4話の計8時間というボリュームで、患者と正面から向き合う若き医師・栗原一止(福士蒼汰)の悩みと成長を描く。医療現場で患者と接する主人公たちが懸命に、真摯に“命”と向き合う姿を通して、“命の尊さ”、“人の優しさ”、“心のつながりの大切さ”を伝えていく。 ■エンタメにしかできないことがある “家族の絆”にスポットを当てた作品も多い。 福田靖が手掛ける「書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~」(1/16[土]スタート、毎週土曜夜0:00-0:30※初回は1時間スペシャル、テレビ朝日系)は、売れない脚本家兼主夫の夫(生田斗真)とベストセラー小説家の妻(吉瀬美智子)が織りなす“ほっこりマイ・ホームコメディ”。 宮藤官九郎脚本の「俺の家の話」(1/22[金]スタート、毎週金曜夜10:00-10:54※初回は15分拡大、TBS系)は、現役プロレスラー(長瀬智也)が介護問題に挑む“王道のホームドラマ”。 北川悦吏子は人気恋愛小説家の母(菅野美穂)とオタクな娘(浜辺美波)がそれぞれの恋に奮闘しながら互いを理解し合っていく姿を描く「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」(1/13[水]スタート、毎週水曜夜10:00-11:00、日本テレビ系)を、「僕の生きる道」など奥行きある人間ドラマに定評がある橋部敦子は「知ってるワイフ」(1/7[木]スタート、毎週木曜夜10:00-10:54※初回15分拡大、フジテレビ系)で結婚生活に後悔する夫(大倉忠義)と妻(広瀬アリス)の夫婦が“人生で本当に大切なこと”を模索するファンタジーラブストーリーを綴る。 「龍馬伝」(2010年)や「まんぷく」(2018年)の福田、「あまちゃん」(2013年)や「いだてん~東京オリムピック噺」(2019年)の宮藤、「半分、青い。」の北川など、国民的ドラマを手掛けてきた人気脚本家がこぞって家族のつながりにスポットを当てたホームドラマに着目しているのも興味深い。 エンタメは“不要不急”か――そんな論争も起きた2020年。今期の癒やし系ドラマ豊作は、そんな時期を経て生まれた「エンタメには、エンタメにしかできないことがある」という制作現場のメッセージではないだろうか。(文=ザテレビジョン ドラマ部)