「沈黙は暗黙の同意、笑うのは共犯」:識者5人に聞く
■これからの世代には、もう聞かせたくない/村木真紀・認定NPO法人虹色ダイバーシティ代表
2014年のソチ五輪では、ロシアで同性愛宣伝禁止法ができたことを受け、世界中でボイコット運動が起きました。そうした経緯があり、オリンピック憲章の差別禁止規定に、性別に加え「性的指向」が追記されています。この流れの中で計画された2020年の東京五輪は、ダイバーシティ&インクルージョンを目標に掲げており、多様性を祝福する大会になることを期待していました。 しかし、森氏の発言と、それを止めることができなかった組織のありようは、女性への抑圧とマイノリティへの無理解という、私たちの社会の抱える課題が未だ解決されていないことを、世界に開示する結果となりました。 私は、日本のあらゆる意思決定の場に、一定割合の女性と社会的少数者(障害者、LGBT、若者など)の席を設けることを提案します。今、すぐに、です。私は女性かつ性的マイノリティという立場で、未来への希望が奪われるような発言を、ずっと聞いて育ってきました。これからの世代には、もう聞かせたくないのです。
■多様性のあるメンバーと多様なコミュニケーションを/伊藤芳浩・NPO法人インフォメーションギャップバスター理事長
2020年東京五輪は、「Know Differences, Show Differences. ちがいを知り、ちがいを示す。」のアクションワードのもとダイバーシティ&インクルージョンを進めると大会ビジョンを掲げており、日本流の「おもてなし」により多くの方に開かれた素晴らしい大会となることを期待しておりました。 しかし、今般の森氏の発言は、ダイバーシティ&インクルージョンの潮流を汲んだものとは受け止めることができず、誠に残念です。私どもは、多様性ある人たちが多様なコミュニケーションを行うことで、一人一人が自分らしく価値を発揮しながら調和できる社会を実現できると考えています。 そこで、社会の仕組みや在り方を決めるような重要な場においては、リーダーが多様性を受け入れ、多様性のあるメンバーと多様なコミュニケーションにより、意思決定を行うようにすべきだと考えています。そうすることが、すべての人が生きやすい豊かな社会への一歩となると信じています。