「沈黙は暗黙の同意、笑うのは共犯」:識者5人に聞く
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言は、日本や世界に大きな波紋を呼んだ。森会長は2月12日も辞任を表明する見込みだが、ジェンダーやダイバーシティなど社会課題に取り組む5人の識者に意見を聞いた。
■深刻なのは、森氏を取り巻く「環境」/能条桃子・一般社団法人NO YOUTH NO JAPAN 代表理事
森会長個人の問題ではなく組織・社会の問題です。今回の件に関し、この問題を森氏個人の辞任だけで終わらせず、森氏を取り巻く環境の問題として捉え、このような問題が二度と起きないようにする動きが重要だと考えています。 もちろん森氏個人には、会長として、オリンピック憲章に掲げられた姿勢を体現するため、自身の考えを更新する職務があると思いますし、その上でこの発言およびその後の謝罪会見などでの態度は職務を全うしているものとは言えません。 しかし、これは森氏個人だけの問題ではありません。このような女性蔑視発言はこれまでも頻繁にされていたと推測できますし、そのたでに黙認し、当たり障りのない発言をし、時間が過ぎるのを待っていた政府・東京都・委員会メンバーなどの姿勢も、女性蔑視発言を容認するものなのです。 私は、20代・30代の女性10名とともに、森会長の発言を見過ごすことはできないと考える人の数を可視化するために、森氏の処遇検討や再発防止策の策定を求める署名を立ち上げましたが、わずか数日間で14万筆を超える署名が集まっています。 この署名は森氏を取り巻く人々が、森氏の続投の是非および再発防止策の策定を問える立場にいることを自覚し、行動することに期待している声とも言えます。この声に応える組織委員会の動きを求めていきたいです。
■曖昧な意気込みより、明確な指示案を/山本和奈・一般社団法人Voice Up Japan代表理事
今回、森会長の発言は、女性に対する偏見に基づいた蔑視発言だったと捉えています。根拠もなく、女性の理事を生まないことを正当化する、女性のリーダーシップや実力を否定するようなコメントであり、国際社会にて日本を代表する大会の組織委員会の会長としては、許されないものでした。 「彼が今まで成し遂げたことを見てみると、辞任させるわけにはいかない」という趣旨のコメントもよくみますが、本当にそうでしょうか。国内外からの批判、他国のオリンピック組織員による反対声明文、ましては在日大使館には「当たり前なことを言っているだけ」と、彼の発言が#DontBeSilent のムーブメントを加速させました。 オリンピックという歴史もあり、国際的に影響力のある大会の根本的なバリューを守り抜く事、偏見に基づいた発言や行動をしないことは、組織委員としての「仕事」の一環であり、それが守れないのであれば、会長の場にはふさわしくないと思います。 何よりも、アクティブに、ジェンダー平等な社会や、多様な考えを認める日本を推進するために、アクションをとって頂くことを求めております。一人一人の個々の差が、尊重され、励まされる社会、そして、ジェンダーやセクシュアリティー、国籍や宗教などの違いを認め合い、受け入れられる社会を作り上げて欲しいです。 そのために、「多様な社会を目指して頑張りたい」といった曖昧なコメントや意気込みではなく、明確な指示案やガバナンスコードを作って頂き、いち早く多様性を尊重する社会を実現するために、アクティブに意思決定をしてもらいたいです。