『帰ってきた 魔界村』インタビュー。シリーズ最新作が約15年振りに帰ってきた経緯をディレクターとプロデューサーに直撃
本日、2021年2月25日に発売日を迎えたNintendo Switch用アクションゲーム最新作『帰ってきた 魔界村』。『魔界村』誕生から35年、そして『極魔界村』から約15年振りとなる作品で『魔界村』、『大魔界村』をモチーフにした完全新作となっている。その意味を始め、気になるゲーム内容などをディレクターの藤原氏、プロデューサーの平林氏にうかがった。 【この記事の画像をもっと見る】 ※本記事は、週刊ファミ通2021年3月4日号掲載の記事内容を増補改訂したものです。 幅広い世代がともに楽しめる作品に ――『帰ってきた 魔界村』は約15年ぶりの最新作となります。どのような経緯で企画が立ち上がったのでしょうか? 平林 昨今はクラシックゲームの体験を楽しまれている方も多くいらっしゃいます。今年で35年を迎える『魔界村』シリーズですが、改めて、皆さんに是非本シリーズを楽しんでもらいたいと、藤原さんとお話を始めました。 藤原 その話の中、『魔界村』シリーズが持っているシンプルだが奥深い「達成感」のある楽しさを、世代を超えて味わっていただけるようなゲームを目指そうという話になりました。 ――『魔界村』と『大魔界村』をモチーフにした理由もお聞きしたいです。 藤原 まず最初に、懐かしくも、新しさを感じられるシリーズの再スタートとなるようなリブートという形でやりましょう、というお話しになりました。『魔界村』と『大魔界村』に、35年の月日を加えたような作品にしようと。 ――『魔界村』と『大魔界村』の2作品がモチーフということは、当時のアーケードファンに向けた作品になっているのでしょうか? 藤原 もちろんそれもありますが、当時遊んでいた方たちは35年経っているので、それなりの年齢になっていると思うんですよ。お子さんがいる方もいれば、お孫さんがいる方もいるかもしれません。そんな方たちがいっしょに遊べる作品にしたい。たとえば大人になって、久しぶりにゲームをしてみようと思っても、いまの時代のゲームは昔と違いシンプルなものが少ないと感じられるかもしれません。 本作では、なるべくシンプルな操作を大切に当時遊んでいた大人の方はもちろん、お子さんとも一緒に楽しんでいただけるような、世代を超えて遊んでいただける作品にしたい、という想いが込められています。 平林 その考えを藤原さんから聞いたときに、とても共感を受けまして、「ぜひやるべきですよね」と、方向性が決まりました。 ――これまでのシリーズ作品は“大”、“超”、“極”と“1文字+魔界村”という法則がありましたが、なぜ『帰ってきた 魔界村』になったのでしょうか? 藤原 “大”や“超”などは、ある意味ナンバリングタイトルのイメージでつけていました。しかし、今回はリブート作であり、『魔界村』と『大魔界村』をモチーフにしています。初心に立ち返るという意味で1作目の『魔界村』のように見てもらいたい。ですが、さすがにタイトルが同じだとややこしくなってしまうので、違う表現をと思っていました。 平林 その藤原さんの思いも受けつつ、竹内さん(※)にも相談したのですが、その中で、皆さんのあいだで本作を話される際に「あいつが帰ってきたね」と話題にしていただけるのでは?と “帰ってきた”という言葉を付けさせていただきました。シリーズにとって、ある種“2周目”のような作品という意味も込めています。 ※……竹内 潤氏。『バイオハザード』シリーズなどを手掛けるカプコンCS第一開発統括。 ――本作の見どころを教えてください。 藤原 まず最初に、動く絵巻物のような独創的なビジュアルだからこそ作れる世界、というものを目指して開発が始まりました。絵巻にも意味があって、昔アーサーという騎士がいて、その人物の物語を後世に語り継ぐというところから始まります。プレイヤーに“伝説となった物語”を体験してもらう、という流れですね。 ゲーム内容としては、序盤の各ゾーンにはふたつのステージがあり、どちらか片方だけクリアしても先へ進める仕組みになっています。なぜふたつのステージがあるのかというと、『魔界村』と『大魔界村』それぞれをモチーフにしたステージ構成になっているからです。当時遊んでいた方は思い出のあるステージを選んでもいいし、もちろん両方のステージをクリアして先に進むこともできます。 ――一本道だけでなく、プレイヤーが選択できる幅が増えているということですね。 藤原 たとえば「レッドアリーマーが倒せないから、もう片方のステージをクリアして先に進もう」ということもできますし、レッドアリーマーを倒して進みたいという場合、別ステージを先に攻略しアーサーを成長させてから、挑戦も可能です。 ――では、ステージ分岐はどちらかが難しい、というわけではないんですか? 藤原 個人によって差はあると思いますが、どちらか片方を難しくしているわけではありません。装備している武器や魔法によっても感じる難しさは変わりますし。また、今回は手前のステージへ戻ることもできます。 ――たとえば終盤まで進んだ後に、最初のステージに挑むこともできますか? 藤原 戻れます。本作はやりこみ要素も豊富なので、前のステージには、いつでも戻って何度でもプレイできるようになってるんです。 「難しいのにやめられない」絶妙な難易度は健在 ――本作には『魔界村』、『大魔界村』にはなかった難易度選択が用意されていますね。 藤原 ゲームで感じる難しさは、プレイする人によって変わります。上手なプレイヤーが感じる難しさと、初心者が感じる難しさは別物ですよね。だからといって、ただ簡単にはしたくない。本作は“すべてのプレイヤーに達成感を味わっていただきたい”ということを心掛けて開発しています。ちなみに最高難度の“伝説の騎士”は、当時の「魔界村」を思い出すほどのヒリヒリする高難易度になっているので、自信のある方はぜひ挑戦してほしいですね。 ――プレイヤー毎でも達成感を味わえるというところで、苦労した部分はありますか? 藤原 難度を下げるために敵の数を減らすなど、そういう調整だけでは達成感は得られないと思うんです。なので、例えばステージの各所に旗を用意して、ミスした場合は旗のところから再開できるようになっています。 プレイ中は必ずミスしますよね。そのミスこそがアクションの楽しさだと思うんです。だから、ミスしても「つぎの旗までたどり着けば先へ進める」という目標を持って楽しんでいただけるかなと。もちろん“伝説の騎士”には旗がないのでミスしたら最初からです。 ――初めて『魔界村』作品に触れる人のために、本作のコツを教えてください。 藤原 基本的にはシンプルな操作で楽しめますが、下撃ちは早めにマスターしたほうがいいかもしれません。ジャンプ中に下へ武器を放てるのですが、このテクニックがあるかどうかで難所に直面した際の対処方法がガラっと変わります。 ほかには、複数の武器を所持できるスキルの修得ですね。これがあれば状況に合わせて武器を使い分けられるので、攻略の幅が広がると思いますよ。そして最後に、武器の弱点を補える魔法を装備しておくことも重要ですね。武器は特定のシチュエーションに特化した性能が多く「この武器があれば完璧」というものではありません。なので、武器が苦手とするシチュエーションに強い魔法を持つことが重要です。武器と魔法の組み合わせを意識してみてください。 ちなみに『大魔界村』では黄金の鎧を装備しているときのみ魔法が使えましたが、本作の魔法は鎧に関係なく使用可能です。裸の状態でも魔法を使えるので、パンツに魔法が仕込まれているという設定だと思っていただければと(笑)。 深魔ステージや地獄部屋など、やり込み要素も豊富 ――深魔ステージというものがありますが、これは『魔界村』シリーズの2周目のような存在なのでしょうか? 藤原 『魔界村』シリーズにあった2周目の感覚とは少し異なります。これまでの『魔界村』は2周クリアすることがシリーズの恒例となっていましたが(※)、今回は、1周目をクリアして2周目をプレイする際、1周目にクリアしたステージが深魔ステージに変化しているという仕組みなんです。本作はステージを選んで進めるようになっていますが、1周目でクリアしていなかったステージは、2周目でもそのままになっています。 ※難易度“見習い騎士”の場合、2周目はありません。 ――では、2周目以降は、クリアしたステージのみが深魔ステージに変化するんですね。変化前のステージはどうなるのでしょうか? 藤原 通常ステージと深魔ステージのどちらをプレイするか選択可能になっています。ですので、2周目以降でも一度クリアした通常ステージをもう一度遊ぶことは可能です。深魔ステージは単純に通常ステージが難しくなっているわけではなく、出現する敵やギミックも変化します。新しいステージに変わっているという表現が正しいかもしれませんね。 ――それはやりがいがありそうです。先ほど、序盤は『魔界村』と『大魔界村』をモチーフにしたステージがあるとお聞きしましたが、全体のステージ構成はどうなっているのでしょうか? 藤原 今回は“ゾーン”というもので大きく分けています。ゾーン1、2はステージがふたつ用意されていて、これが『魔界村』、『大魔界村』をモチーフにしたものになっています。ゾーン3、4、5はステージがひとつになっていて、ここは『魔界村』、『大魔界村』の懐かしさも感じつつ、新しいギミックなども入れていますので新鮮な気持ちで楽しめると思いますよ。 ――新しい要素”オービィの木”についてアドバイスをいただけますか? 藤原 魔法とスキルは、各ステージでオービィという不思議な生き物を見つけ出し“オービィの木”へ戻してあげ、木を徐々に復活させることで段階的に習得できる仕組みになっています。つまり、オービィを集めるほど多くの魔法やスキルを習得できるので、ステージを攻略しやすくなっていくんです。 オービィは通常ステージだけでなく深魔ステージにもいます。しかし、オービィを集めなくても進めることは可能なので、プレイヤーによっていろいろな遊びかたができると思います。もし、どうしてもクリアできない壁に当たったときは、魔法やスキルの習得を考えてもらえれば攻略の幅も広がるので、一旦ステージを戻るなどしてオービィを集めてみるのも良いと思います。そうすれば突破口ができるかもしれませんのでぜひ諦めずに挑戦してください。 あ、それと、習得した魔法やスキルをオービィの木に戻して別のものを習得することもできますから、いろいろ試してみるといいかもしれませんね。 ――黒い宝箱、白いマジシャンというのも、2周目以降に登場するものなのでしょうか? 藤原 いえ、これらは1周目から登場します。基本的に宝箱は隠されているので探していただくものなのですが、黒い宝箱は、さらにもう1段階発見が難しいものとなっています。黒い宝箱から出現する白いマジシャンを倒すとステージのどこかに新たな道が拓け、特別な場所“地獄部屋”へ行くことが出来るようになっているんです。クリアすると報酬としていいものがもらえたり、ステージのショートカットができたりとさまざまな恩恵がありますので、ぜひ探してみてください。 ――“魔玉”というアイテムも気になります。 藤原 魔玉の多くはボスが持っていて、倒すことで魔玉が1個手に入ります。入手方法はボス以外にもあるのですが、この魔玉が最後の最後で重要なキーになる、ということだけお伝えしておきます。詳しくは言えませんが、これはぜひ実際にプレイして、そのヒミツを解き明かしていただきたいですね。ただ、魔玉は初プレイ時からガッツリ集めるものはないので、ある程度プレイしてから「そういえば、これなんなんだろう?」くらいに感じていただければと。 ――チャレンジ要素というものがあるようですが、これはどのようなものなのでしょうか? 藤原 チャレンジの内容はゲームの節目節目で段階的に用意してあり、“特定のアイテムを収集”、“魔法をすべて解放する”などといった項目があります。これはなにかに挑戦するというものではなくて、これまでの自分のプレイを確認するためのような意味合いが強いですね。どのくらい『帰ってきた 魔界村』を遊び込まれているかの指標になればと思い導入しました。 ――なるほど。あと、“魔時計”という新要素は……? 藤原 特定の条件を開放することで使えるようになる機能なのですが、主人公自身の速度だけではなく“ゲーム全体の速度そのものを変えられる”ようになります。たとえば難しくて進めない場所も、魔時計でゲームスピードを遅くすれば敵やギミックに対応できて進めるようになるかもしれません。わかりやすく言えばスローモーションのような感覚でプレイできるんです。 逆にゲームスピードを速くすることもできますが、これは熟練プレイヤー用ですね。かなり難度が跳ね上がると思いますよ。ちなみに難易度選択の“若き騎士”、“見習い騎士”では最初からゲームスピードを遅くできますが、“孤高の騎士”、“伝説の騎士”では使えません。魔時計はゲームを一周クリアすると解放されますので、まず一周目は頑張ってクリアしてください。魔時計を使うと通常とはまた違った感覚でプレイできますので、ぜひ試してみてください。 ――では、最後に読者の皆さんに向けてメッセージをお願いします。 藤原 当時の『魔界村』を経験していたファンの方はもちろん、初めて『魔界村』をプレイする方にも満足いただける作品になっているので、ぜひ果敢にチャレンジください。また、何回も遊べるような要素も数多くありますので、いろいろと探してみてください。最後に、いままでの『魔界村』シリーズにはなかったサポートキャラクター“サンテンジー”を使用したローカルでのふたりプレイもできますので、親子やカップル、ご友人などみなさんでも遊んでいただけたらうれしいです。
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