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コロナより怖い「仕事中毒」! 「お仕事ポルノ」と「勤労アニメ」に要注意

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デイリー新潮

 多くの日本人に感動を与えてきたNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」とスタジオジブリの「宮崎アニメ」。 養老孟司さんが説く「自分探しなんてムダなこと」  いずれも素晴らしいコンテンツに思えるが、「ひきこもり」を専門とする精神科医・斎藤環さんと、双極性障害にともなう重度の「うつ」をくぐり抜けた歴史学者・與那覇潤さんは、日本における「心の病」の増加と、G7(先進7カ国)で最悪となる自殺率の背景には、これらのコンテンツの負の影響があるのではないかと懸念している。  どういうことか? 2人の対談本『心を病んだらいけないの? うつ病社会の処方箋』から、一部を再編集してお伝えする。  ***

NHKが放送する「お仕事ポルノ」? 

與那覇 「趣味を仕事に」幻想というか、「一流の人間は好きなことを仕事にしており、だから毎日輝いている」といった価値観の背景には、テレビでやたらと流れるお仕事番組の影響があると思うんです。TBSの「情熱大陸」がいちばんの老舗ですが(1998年~)、平成を通じて増殖し、見ない曜日はないくらいになりました。  こうした番組は毎回主人公を設定し、その人の過去の活躍の映像も混ぜながら、日常を追いかける形で描いています。そうすると『美味しんぼ』の山岡士郎のような「ぶっちゃけ仕事は手を抜いて、飯でリア充してます」みたいなタイプは取り上げようがない。結果として「仕事は楽しくないとダメなんだ」「趣味を仕事にできない私は負け組だ」と思い込む人が増えたのではないでしょうか。 斎藤 『美味しんぼ』の山岡や『釣りバカ日誌』のハマちゃんのように「副業で本領発揮」みたいな作品がマンガや小説で激減したのは、もうサラリーマンが「気楽な稼業」ではありえなくなった時代の反映ですね。講談社系を中心に「職業もの」自体は手堅く続いていても、最近の人気作品はほとんど「本業で輝く」的な内容ばかりなんです。  注目すべきはそこで取り上げられる職業の選択が、どんどんマニアックになっていること。医療ものだと、(天才外科医である以上に)ジェネラルドクターに近かった『ブラック・ジャック』の長閑さは過去のものとなって、病理医というニッチな職種に特化した『フラジャイル』のような作品が人気になる。これは昔NHKでやっていた「プロジェクトX 挑戦者たち」と、後継番組といえる「プロフェッショナル 仕事の流儀」を対比しても言えることですが、いまは希少性を感じさせるスペシャリストのほうがウケるのでしょうね。 與那覇 それは結構重大な問題で、働くというのはみんながやることなのに、メディアの取り上げ方が非常に偏ってきているというか、悪い意味で「スター化」していませんか。どんな仕事だって尊いんだよ、ではなくて、「この人はすごいだろう。こんな特殊能力は、お前にないだろう。それが一流と凡人の差だ」みたいな見せ方が目立ちます。フィクションだと割り切って楽しむマンガはそれでいいですけど、ドキュメンタリーでやられるのは強い違和感がある。 「感動ポルノ」という、泣かせるためなら事実改変でも何でもする演出を揶揄(やゆ)する用語がありますが、ぼくはその種の番組って「お仕事ポルノ」だと思うんですよ。それで仕事観を作ってしまうことの問題は、もっと語られるべきだと思います。

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