バイオマス発電は本当にエコか(2) 「除染」疑惑も
近年バイオマス発電所が増えている。「バイオマス」と聞くとそれだけでエコなイメージがある。とりわけ木質バイオマスの人気は高く、木質ペレットの輸入量が急増中だ。だが、環境への影響は実際にどうなのだろうか。(編集委員・栗岡理子)
木質ペレット輸入量が22倍に激増
国際環境NGOのFoE Japan(東京・板橋)は、「2012年に約7万トンだった木質ペレットの輸入量は、2019年には161万トンと22倍にも急増した。おもな輸入国はカナダとベトナムだが、今後数年以内にアメリカからの輸入が増え、数百万トンになると予測される」という(満田夏花・事務局長)。 福島県いわき市で国内最大級のバイオマス発電所を建設しているエイブルエナジー合同会社(福島・広野町)の燃料も、全量が米国産の木質ペレットになる予定だ。 同社に木質ペレットを供給するのは再生可能エネルギー大手のエンビバ社(米国)だ。エイブルエナジー以外の国内のバイオマス発電所にも木質ペレットを供給する計画がある。 しかし、北米で森林を保護し、気候危機に取り組む環境NGO・Stand.earthのタイソン・ミラー氏(森林プログラムディレクター)はエンビバ社について、「約8割の原料が樹木を丸ごと使ったもので、うち過半が湿地林からだ」と昨年日本で講演した。 木質チップの生産が、森林と生態系を破壊しているというのだ。
国産の木質チップ利用の目的は除染?
日本のバイオマス発電所の燃料は、現在25%が国産の木質チップだ。国産の木質チップ利用も微増傾向にある。 増加の背景には、燃やしてもカーボンニュートラルだからCO2の排出量はカウントされないという輸入バイオマスと共通の理由もあるが、国産材を使用する発電所の場合、規模がそれほど大きくないため環境アセスメントの対象外で、住宅地の近くでも建設しやすいということもあるようだ。 この発電所をめぐり、各地で地元住民の反対運動が活発化している。それら地域に共通するのは、地元住民にはほとんど説明がなされないまま建設が進められることだ。 そのため、前もって詳しい説明がないのは、放射能で汚染された森林の「除染」目的の発電だからではないかと疑われている。 このうち、前橋バイオマス発電所(群馬・前橋市)と田村バイオマス発電所(福島・田村市)は、住民訴訟に発展した。 前者は、周辺地域の放射能汚染への懸念や夜間騒音に悩む住民らが、2016年に群馬県を相手取り提訴した。県が排出ガス量の計算方法を変更したため、同発電所は環境アセスメントの対象外となり、住民の不信を招いたことも、住民側が訴訟に踏み切った理由の1つだ。現在、最高裁で争われている。 後者は、現在福島地裁で係争中だ。放射性物質を除去するというHEPAフィルターの偽装疑惑も持ち上がる中、発電所では最近、試験焼却が始まった。 バイオマス利用は「環境にやさしい」というイメージがある。しかし、少なくとも発電所で燃やしてしまう場合、本当にエコか疑わしいケースも多いようだ。
栗岡 理子