陳内将「役者人生の代表作に」ひとりで挑む“7人の登場人物” 「ひとりしばい」vol.7レポート
講談社とOffice ENDLESSの共同プロジェクト「ひとりしばい」vol.7が2020年10月24日(土)に配信された。 【写真を見る】陳内将「ひとりしばい」vol.7の様子 実力派俳優と脚本・演出がタッグを組み唯一無二の世界を作り上げる「ひとりしばい」。第7弾となる『タワーリングアンコンシャス・ザ・ショウ』に挑んだのは、陳内将。MANKAI STAGE『A3!』などの人気2.5次元作品をはじめ、オリジナル舞台でも圧巻の演技力が話題を呼んでいる。 脚本・演出を担当した伊勢直弘。「アイ★チュウ ザ・ステージ」シリーズやLIVEミュージカル演劇『チャージマン研!』などで知られ、役者ひとりひとりにスポットライトを当て、その個性を引き出す演出が魅力的だ。 今回は、一夜限りの配信とは思えない程に熱い思いが込められた本作のあらすじや見どころをお届けする。舞台を愛する男たちのほとばしるエネルギーを感じてほしい。 ※公演写真・ストーリーに触れている内容を掲載しています。未視聴の方は、ネタバレにご注意ください。
心と向き合う、優しく切ないストーリー
物語は、主人公が客席に座り“何か”を見ているところから始まる。誰かと話している様子だが、その相手の正体は分からない。 不意に挟まれる画質の粗い映像など、冒頭から不思議な感覚に襲われる。 しかし、そんな不穏な空気もすぐに一変。カラフルで華やかなライトをバックに登場したのは、勢いのある漫才コンビ。舞台に立っているのはもちろん陳内ひとりなのだが、ボケとツッコミ、確かにふたりの人間がその場に立っているように見えた。 その後、軽い雰囲気のテキトー、あるいは、少々暴力的なところのある輩など、さまざまな登場人物が加わり、会話のスピードが加速度的に増していく。観ていて思わず笑いがこぼれてしまうような漫才シーンは、お笑いとしての完成度も高く、陳内の新たな魅力またひとつを知ることができた。 賑やかな漫才シーンが続くかと思われたが、劇場は再び不穏な空気に包まれていく。 舞台の上に立つ登場人物たちは、全て主人公の中に存在している人格だということが判明したのだ。それぞれの人格が生まれた経緯も、作中で明らかになる。 たとえば物語の中心となっているボケとツッコミは、笑えなかった子ども時代のトラウマから生まれた。 人格の中では一番の後輩であるテキトーは、“社畜”となって疲弊した結果生み出されている。 強い態度で他の人格の上に立っているように見えた輩も、暴力を受けていた学生時代に「強い力がほしい」と願った結果の姿であったりと、誕生の理由はどれも切なく苦しいものばかり。 生まれたタイミングや性格は全て違っているが、彼らに共通するのは「主人格であるショウを守るために生まれた」という事実。 ショウはカウンセリングを受け、自身の中に6つの人格が宿っていたという事実に気付く。多重人格を改善するために、医師から人格統合プログラムを受けることを勧められる。 ショウがどのような選択をするのかは、ぜひその目で見届けてほしい。物語の結末を見れば、きっと温かく切ない気持ちになるだろう。 自分と向き合うこと。自分の弱さを認め、受け入れること。そしてその先に進むためには、どうしたら良いのか――。自己と対話することの大切さを知ることができる、心に訴えてくるストーリーだった。