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「五輪の可能性あるなら…」背中を押された院生女子ボクサー 夢破れた師の意思継いで2人3脚五輪ロード

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中日スポーツ

ウエルター級 鬼頭茉衣(中京大大学院)

 五輪への夢破れたコーチの思いを背負い、二人三脚で東京五輪を目指す女子ボクサーがいる。ウエルター級の鬼頭茉衣(23)=中京大大学院。昨夏から師事する豊田大コーチ(29)は2012年ロンドン五輪前の国内選考会で、同五輪銅メダルを獲得した清水聡(34)に敗れた経験がある。新型コロナウイルスの影響下でトレーニングは思うに任せないが、師弟は心を一つに夢を追いかける。  男子相手の実戦練習でも、鬼頭は気後れせず前に出る。リングサイドで見守る豊田コーチの顔がほころんだ。「技術的には足りないところがたくさんあるけど、なにせ気持ちが強い」。指導する愛知・三好高のボクシング部は休止中。練習拠点とする高校の施設は使えないが、鬼頭の自宅倉庫でトレーニングにマンツーマンで付き添い、知人のジムにも練習受け入れを頼んだ。コロナの渦中で、まな弟子を献身的にサポートしている。  昨年夏、鬼頭は代表争いのリングを下りようとしていた。当時所属していたジムの指導方針と合わず、結果も出ない。試合会場への送迎でたまたま同じ車に乗り合わせた豊田コーチに、その苦衷を打ち明けた。  豊田コーチは諭した。「五輪の可能性があるなら、やってみたらどうだ」。自身にとって五輪は夢。国体優勝などトップクラスの実績を誇ったが、同じバンタム級には傑出したボクサーがいた。ロンドン五輪選考会でメダリストとなる清水に「実力的に差があった」と歯が立たず、その後、教職の道へと進んだ。  だからこそ五輪のチャンスがあるのに、自らその芽を摘もうとしている鬼頭を何とかしたかった。二人三脚での五輪ロードが始まった。  ボクシングは変わり始めた。鬼頭は「以前は突っ込んで振り回すだけ。豊田先生にはワンツーから教わった。駆け引きの楽しさも感じるようになった」。猪突(ちょとつ)猛進タイプの鬼頭が、技術と戦術を一から磨き直した。11月の全日本選手権で復活V。東京五輪への視界が広がった。  コロナ禍で鬼頭が五輪の出場権獲得を目指すはずの5月の世界最終予選は中止となった(新日程は未定)。五輪自体も1年延期。現在は中ぶらりんの立場だが、鬼頭はポジティブだ。「不謹慎かもしれないが、延期になってよかった。今はフィジカルも強化している。もっと強くなれる」  ボクシング歴はわずか5年。師が夢のままで終わった五輪を現実にするべく、鬼頭は日々進化する。  ▼鬼頭茉衣(きとう・まい) 1997(平成9)年3月14日生まれ、愛知県みよし市出身の23歳。愛知・豊明高、東海学園大出。高校まではバスケット部。大学1年でボクシングに転じ、2年時の全日本選手権で初優勝。東京五輪代表選考会を兼ねた2019年の全日本選手権で再び優勝した。3月のアジア・オセアニア予選では敗れ、五輪切符は世界最終予選へ持ち越しとなっている。現在は中京大大学院に在学中。

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