萩原朔太郎没後80年で対談や朗読劇 東出昌大さんら熱演
11日で没後80年となった前橋市出身の詩人、萩原朔太郎(1886~1942年)をしのぶ「朔太郎忌」(同市と同実行委主催)が14日、同市の昌賢学園まえばしホールで開かれた。日本近代文学研究者の川島幸希さんと詩人・作家で朔太郎研究会長の松浦寿輝さんの対談や、第1詩集「月に吠える」刊行に至るまでを題材にしたリーディングシアター(朗読劇)が披露された。 【写真】朗読劇本番に向け稽古する東出さん
今回は朔太郎の同詩集出版をテーマに、「第50回朔太郎忌 謎めぐり『月に吠える』の事件簿」と題して開催。2部構成の第1部で川島さんらの対談が行われ、文学者にとっての初版本について語り合った。同詩集を含むさまざまな詩集の装丁や松浦さんが自身の詩集に込めた思いなどについて話した。
「月に吠える」は、初版の後に別の版元から刊行された経緯がある。松浦さんは「初版で注目するべきは挿画。朔太郎にとっては詩画集という思いがあった」と指摘。初版本収集家でもある川島さんは「2冊は装丁からして異なる似て非なるもの。初版本はわれわれを作品が発表された時代に戻し、作品に込められた思いを実感させてくれる」と語った。
第2部のリーディングシアター「さんにんふたくみ」は俳優の東出昌大さんが朔太郎役で登場した。北原白秋や室生犀星、詩集出版に携わった版画家の恩地孝四郎、田中恭吉らと関わりながら詩集出版に至るまでの物語を、声優の柳沢三千代さんや俳優の丸川敬之さんらと演じた。熱のこもった舞台に、会場は上演後しばらく拍手が鳴りやまなかった。
上毛新聞の取材に、東出さんは「朔太郎の詩を観客の前で言葉にして口に出せるというのは、非常に幸運な機会だった」とかみしめていた。