【相撲編集部が選ぶ秋場所11日目の一番】 翔猿(叩き込み)阿武咲
トップに2敗で5人が並ぶ大混戦の幕内優勝争い。11日目は2敗同士の対戦が組まれた。
新入幕の翔猿と阿武咲の一番は、低く頭から当たった翔猿に対し、阿武咲は胸から当たって突き放す。翔猿が右を差すも、阿武咲が右ノド輪でのけぞらせ組ませない。途中、翔猿は蹴返しにいき、阿武咲が出てきたところを左に動いてイナし、前のめりになった相手を叩き込んで2敗を守った。翔猿の動き勝ちといったところだ。 「逃げずにどんどん攻めようと思っていた。思い切り取れた。蹴返しはとっさでしたけど、とっさにやめました。蹴返しして負けているので、パッと判断した」と振り返る。たしかに、蹴返しにいっているが、バランスを崩すほど大きく蹴ってはいない。相手を脅かす意味でもちょうどいい感じだった。 優勝争いのトップを並走するが、「(優勝は)まったく意識していません。二ケタや三賞も意識せず、一番一番に集中していくだけです。誰が相手でも思い切りやるだけ」と語る。さすがに優勝は意識していないだろうが、二ケタ勝っての三賞は意識しているはず。 夜は新型コロナの感染予防で外に出られないだけに、「翌日の対戦相手の取組を見たりして、相撲のことばかり考えている」と言う。12日目の相手は同じ2敗の若隆景。この相撲で勝った方が、上位の割を崩してでも、上と当てられるだろう。 幕内の優勝争いを整理すると、2敗に貴景勝、正代、若隆景、翔猿の4人、3敗で朝乃山、阿武咲が追う展開となっている。もしも新入幕が優勝したら、大正3年夏場所の両国以来106年ぶりの快挙となる。 文=山口亜土
相撲編集部