村上春樹、ビートルズの名盤『ラバー・ソウル』を初めて聴いた当時を振り返る「それ以前には存在しなかった種類の音楽だった」
作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMの音楽番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。5月29日(日)の放送は「村上RADIO ~ラバー・ソウルの包み方~」をお届けしました。 2019年6月16日(日)に放送した、ビートルズの初期のヒットソングのカバー楽曲を取りそろえた特集「The Beatle Night」に続くビートルズ特集の第2弾。今回は、ビートルズの転換点の1つとなったアルバム『ラバー・ソウル』(英国盤)を、ほぼ収録順に村上DJが選曲&解説。発売当時、16歳だったという村上さんが、自身の小説のタイトルにも使用した「ドライブ・マイ・カー」や「ノルウェイの森」が収録されるアルバムを、多彩なカバー楽曲で紹介しました。 この記事では、その中から前半2曲についてお話された概要を紹介します。
こんばんは。村上春樹です。村上RADIO、今日はビートルズのアルバム『ラバー・ソウル』を丸ごとカバー特集でお送りしたいと思います。題して「ラバー・ソウルの包み方」。A面の1曲目から順番にお送りします。放送時間の関係で、残念ながら全部おかけすることはできませんが、14曲のうち10曲くらいかかるといいなと思っています。
<オープニング曲> Donald Fagen「Madison Time」
LP『ラバー・ソウル』(Rubber Soul)は、1965年12月に発売されました。僕はそのとき16歳でしたが、このレコードが出たときのことをよく覚えています。そして、その音楽はすごく新鮮に耳に響きました。なんていうのかな、それは、それ以前には存在しなかった種類の音楽だったんです。そして今聴いても、まったく古びていません。同じように新鮮です。今日はいろんな人のカバーで、この素晴らしいアルバムを楽しんでください。 今日は英国盤LP『ラバー・ソウル』の曲順に従ってかけていきます。 というのは、オリジナルの英国盤は14曲入りなんですが、アメリカのキャピトル・レコードはそこから4曲を削除して、別の2曲を付け加えて発売するという暴挙に及んだからです。だからアメリカ盤と英国盤とでは内容が違っています。そのことは、またあとでちょっと話しますけど。